夢の国から悪夢の国へ: 40年間続いたアメリカン・バブルの大崩壊 の感想

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タイトル夢の国から悪夢の国へ: 40年間続いたアメリカン・バブルの大崩壊
発売日販売日未定
製作者増田 悦佐
販売元東洋経済新報社
JANコード9784492444047
カテゴリビジネス・経済 » 経済学・経済事情 » 各国経済事情 » アメリカ・カナダ・オーストラリア

購入者の感想

かつては、「自由」「民主主義」「豊かさ」に関して、日本人のあこがれの国だったアメリカが凄まじい国に変わり果てていることを、膨大なデータで実証した本である。アメリカの恐るべき実情については、堤未果『貧困大国アメリカ』シリーズ(岩波新書)で既に知られているところだが、本書はそれをエコノミストが裏付けたことになる。本書を読んで、評者は、強欲資本主義の成れの果ての地獄絵図は日本の未来図かもしれないと危惧するが、著者が日本の将来に楽観的なのが気になる。

著者は、第二次世界大戦後の1970年代半ばから、アメリカは、それまでの中間層が厚い豊かな「夢の国」から、「悪夢の国」への転落が始まったことを様々な社会経済指標を用いて解き明かす。その主な要因として著者は、次の4つを挙げる。(1)貧困の構造化、(2)大企業・官僚機構の利権の横行、(3)「自由の仮想現実化」(プロパンガンダによる大衆の幻想)、(4)持続不能になったクルマ社会。

「悪夢の国」の実態が最も典型的に表れているのが栄養・医療問題だろう。安価で高カロリーのジャンクフードに頼らざるを得ない貧困層、先進国でダントツの肥満者比率(アメリカの25歳以上のBMIが30以上の比率は30.6%、一方日本は3.2%)、肥満による病気多発、これも世界でダントツに高額の医療費、先進国中最低レベルの平均寿命、等々。ちなみに、本書でも紹介されているサイト「People of Walmart」では、日本ではありえない超肥満者が店内を闊歩する珍景が眺められる。

本書で詳述されている強欲資本主義の成れの果ての地獄絵図は、アメリカにおいては、国民の1%(あるいは0.01%)が残りの99%から、低賃金労働で収奪する仕組みを作り上げてきたからである。しかもその過程で、最初から悪意を持って政策立案した大統領はいなかったはずである。一つ一つの新自由主義的政策の積み重ねが、全体として強欲資本主義の跋扈を許してしまったのである。まさに、「地獄への道は善意で敷き詰められている」のである。

面白かったです。一気に読めました。

一言だけ。

巻末に参考資料のデータがいっさいありません。この人がどのような資料を用いてこの本を書いたのかはわかりませんが、本文中での様々なグラフや統計資料から判断する限りでは、著者の独自の考察だけではなく、おそらく何冊かの種本があるものと思われます。

そうした資料をきちんと明示してくれた方が、信用が増すものなのですが、この手の「これからの世界は大変だ〜」本の著者の方は、そうした資料をきちんと示すということがあまりに疎かだと思います。これだと、読者は、いろんな本を読み込みながら自分の頭で相対的に評価するということができないですね。

そうそう、もう一言。

様々な統計資料を示してくれるのはよいのですが、グラフを見れば一目瞭然なことを、わざわざ言葉で説明されるのは冗長です。もう少し読みやすさの工夫をしてもらいたかったです。この人に限らず「これからの世界は大変だ〜」本の著者の方は本を書きすぎではないですか。雑な本を3冊書くだけの時間と労力を投入して、完成度の高い本を1冊書いて欲しい。(完成度の高い本を1冊書くよりも、書き殴りで3冊書いた方が、印税収入は多いのだと思いますが。)

「書き殴り」だと判断できるのは、あまりに初歩的な校正ミスが多いことからもわかります。たとえばp.171の「清掃業各社」は「製造業各社」のタイプミスがそのまま印刷されてしまったものと思われます。また、p.157の「統計データは正反対の事実を示している」で始まるパラグラフはその直前の文とまったく繋がっていません。切った張ったでカット&ペーストを繰り返すうちに、ロジカルな繋がりが失われてしまったのだと思われます。

そうした欠点はあるにもかかわらず、全体として読むに値する本だとは思いました。そして多くのことを学ぶことが出来ました。

相変わらずの増田節です。今回は増田さんのアメリカ論です。ここで指摘されるのはアメリカでの異常な不平等の存在とその悪化の傾向です。そういう意味では、この論点は、いまアメリカでベストセラーとなっている作品(Capital in the Twenty-First Century)とも共通するものです。もっとも増田さんの作品は、その射程はもう少し短いもので、1974年の個人退職年金法改正を経済金融化の分水嶺そしてアメリカン・バブルの発端と捉えたものです。これにより個人からのお金が株と投信に流れ込みその後の株式の大相場を支えたというわけです。増田さんによるとこれも不平等と貧困間の進展によるいよいよ限界に達したいうわけです。貧困の構造化、利権の横行、自由の仮想現実化、持続不能となった車社会という角度から、もはやこの「虚構の」バブルが維持不可能であることをこれでもかというほど、データと票とグラフで証明していきます。特に教育と医療のコストの物価水準からかい離したペースでの増加はとうとう袋小路にアメリカを追い込んでいくというのです。最後に触れられる、「アメリカの次の戦争は内戦」かもしれない」というのは、驚くべき予言です。国民皆保険は否定しながらも、人民武装主権(武器保有禁止の否定)というのはそのシナリオを放棄しないアメリカ人の本能なのかもしれません。アメリカに学んではいけないというのは永遠の真実ですが、本書でも増田さんがどうしてこのようなネガティブなアメリカ認識ににたどり着いたのか、そこの部分は本書でも明らかにされることはありません。

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