インフレ目標政策 の感想

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参照データ

タイトルインフレ目標政策
発売日販売日未定
製作者伊藤 隆敏
販売元日本経済新聞出版社
JANコード9784532355579
カテゴリ »  » ジャンル別 » 投資・金融・会社経営

購入者の感想

この本は、かねてからインフレ目標政策の導入を主張してきた著者による平易な解説書です。インフレ目標政策は海外諸国においてスタグフレーション対策として導入されましたが、これはデフレ対策にも有効であることをわかりやすく解説した良書です。

日本におけるインフレ・ターゲティング論者の先駆的存在で、恐らく天才の伊藤隆敏先生によるインタゲ政策の概説書です。
2001年(何たる先見性!)版の『インフレ・ターゲティング』の増補・改題版として、一般向けを意識して簡潔に書かれており、大変読み易くなっています。

本書は、(なぜ2%なのか?といった)インフレ目標政策の枠組みを示した上、日本が15年来陥っているデフレ・スパイラル(デフレ期待→消費・投資意欲低下→景気後退→物価下落→デフレ期待→・・・)から抜け出すべく、期待インフレ率を変化させるべきことが肝要であると説きます。この辺りは、「期待」の現実的効果を疑問視する(やや異端的な)『デフレーション』の吉川先生の議論とは相容れない所でしょう。
インフレ目標政策は「インフレを必ず起こすことができる」と強く主張され、その手段として非伝統的金融政策(今まさにFRBがやっているQEのような量的緩和)が有効であり、中銀のBS毀損リスクをとってでも実行する価値があるとされます。
筆者にとって重要な経済政策は、現在の低成長・デフレの悪い(ナッシュ)均衡から、もう一つの(良い)均衡である高成長・インフレにジャンプさせることですが、各々の均衡は小さいショックに対しては安定的であり、ジャンプのためには「大きな力」が加わる必要があります。そのため、安部政権の金融政策・財政政策・成長戦略の「三本の矢」は、市場期待・行動を一挙に変えて均衡点のジャンプを惹起する政策として正当化されます(多少リップサービスも入っていると思いますが)。
また、ゼロ金利下・デフレ下で採用される非伝統的金融政策では、伝統的なトランスミッション・チャネルである(金利低下→)銀行ローン拡大に代わり、将来のインフレ期待への働きかけ、資産効果(株価上昇)、為替レート変化(自国通貨安)を通じた輸出振興といった様々なチャネルが重要になるとしながら、4章の「想定問答」ではそのトランスミッション・メカニズムについて「ここまで買えば、必ずこうなる、というシナリオはありません」とされています。しかし同時に、「100%の自信がないからアクションをとらないというのでは、責任ある政策当局とはいえません」「不作為のリスクの方が大きいと思います」とも書かれています。

これは経済書でなく、政治的パンフレットです。
あまり説得的でない論拠をもとに「インフレは必ず起こせます」「止めたくなったら必ず止められます」と言われても、ああそうですかとしか言いようがありません。著者は東大教授ですから、もちろん理論的実証的分析が背景にあるはずなのですが、本書ではそこが割愛されているため、結論だけが啓示されているような印象です。もう少し踏み込んだ解説を期待していたのですが、肩すかしということで星は少なめに。

でもインフレターゲット推進論者の提案内容を理解するためには有益でした。
あとは、それが現実のものになるかどうか。なるといいですね。

(2013年5月現在、上昇したのは株価と金利とエネルギー価格。変わらないのは賃金とCPI)

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