Managed by the Markets: How Finance Reshaped America の感想
参照データ
タイトル | Managed by the Markets: How Finance Reshaped America |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | Gerald F. Davis |
販売元 | Oxford Univ Pr (Txt) |
JANコード | 9780199216611 |
カテゴリ | » 洋書 » By Publisher » Oxford University Press |
購入者の感想
さすがにドキュメンタリーものにも飽きて、もう少し大局からアメリカの問題を捉えた本を探していて見つけた作品です。出版社が示すようにこれは社会学者によって書かれた学術本です。といっても中身は学部生向けにわかりやすくアメリカの社会の組織原理を解説したものです。corporate feudalismからshareholder capitalismへの変貌が様々な角度から分析されます。それぞれの領域の専門家にはよく知られている変化が順に取り上げられます。まず生産性の上昇により、工業からサーヴィス業への移行、それに伴い組織原理としてはその頂点を極めたcorporate feudalismの消滅、所有と経営の分離に由来する問題への解決としてのcorporate governanceの仕組みの導入、銀行という存在とその機能の変化、そして政府自体のvendor-stateへの変貌、これらが論点となります。この変化は全体としては、金融を国家の世俗宗教とするportfolio societyと特徴付けられます。全てのターミノロジーや人間関係までが、金融の用語をmetaphorとして語られる中で、そこに想定されるのは無機質な寒々とした光景です。そしてその観念上の寒々さが、現実の住宅の大量のforeclosureの事実としていま現実化しているわけです。新しい経済は新しい社会関係の創出を必要としますが、伝統という歴史がないアメリカは観念の遊びをいつも現実の中で究極まで(portfolio societyへの改造)突き詰めてしまいます。そして他国へまでそのイデオロギーの輸出を善意と利害の混合の中で勧めてしまうというわけです。全体としての筆致はドライですけど、作品の性格上、その筆致は抑えられたものです。しかし企業のIR活動をpeformance artの茶番と取り上げた部分は鋭い指摘です。