火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF) の感想

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参照データ

タイトル火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)
発売日販売日未定
製作者アンディ・ウィアー
販売元早川書房
JANコード9784150120436
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 英米文学

購入者の感想

日本では2016年2月に公開される、リドリー・スコット監督、マット・デイモン主演の映画『オデッセイ』(原題は小説、映画ともに “The Martian” )の原作と聞いて読了。

ハードSFに分類される本書では、近い未来を舞台にして、有人探査の遂行中に遭遇した事故により火星に取り残されてしまった主人公、アメリカ人宇宙飛行士マーク・ワトニーのサバイバル劇が描かれています。通信手段が絶たれ、食料、空気、水に限りあるなか、科学者であるワトニーが自らの知識を駆使して生き残りを図る様は、緻密な科学考証にもとづいて描かれていて読み応え抜群でした。

語りの形式は主人公の一人称とそれ以外の人物の三人称の組み合わせです。主人公視点では、彼自身がログとして残す “日記” という体裁で語られています。そのため、“語り手” である主人公の抱く心情や経験する出来事が、直接的に描写されるわけではなく、彼により取捨選択されているという間接性をもって描かれています。ある事態に直面したとき彼が “本当に” どう思ったのか。それにはつねに留保がつきます。この語り口がとても効果的でした。

主人公は “日記” のなかでは悲観的に陥ることなく、いつも軽口をたたき、ジョークを飛ばす。もちろんそれは彼の前向きなキャラクターを示すものでしょう。けれど彼が置かれた環境を考えれば、絶えざる不安につきまとわれてもいるはず。もしかすると軽口やジョークは、絶望的な状況下に置かれた自分を鼓舞するためかもしれない。“日記” という間接的な語り方をとることで、悲観的な心情を明記せずに湿っぽさを排しつつも、そのように行間を想像させる余地を残しているのです。
くわえて、主人公以外の三人称のパートでは、主人公が置かれた事態の深刻さが客観的な視点から語られることで、主人公視点との強い対比を生み、物語をよりダイナミックかつドラマティックにしていました。

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