Art of Memory の感想
参照データ
タイトル | Art of Memory |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | Frances A. Yates |
販売元 | Univ of Chicago Pr (Tx) |
JANコード | 9780226950013 |
カテゴリ | Subjects » Professional & Technical » Professional Science » Behavioral Sciences |
購入者の感想
まず、はっきりさせておかなければならないのは、この本は今流行の「試験に役立つ簡単に何でも覚えられちゃう本」のような安っぽいハウツー本ではないということだ。
ギリシャ時代の詩人シモニデスが、記憶したい事柄と建築を結び付けたことに始まるという記憶術は、その後弁論家が弁論を覚えるために、宗教家が神の言葉を得るために、さまざまな応用・広がりを見せていく。しかし、その中心にあるものは「場」と「イメージ」を結び付けることであることに変わりはない。
記憶のための建築が時代によって変化していくとき、記憶術もその影響を受けざるを得ない。同様に記憶術の体系化の歴史は、場としての建築や芸術、イメージとしての宗教・思想の変化の歴史である。中世において記憶術の再編を行ったのはスコラ哲学で知られるトマス・アクィナスであり、この哲学がカトリック教会の公式神学となったことを考えても、そのことは明らかである。
宗教的道徳観、倫理観の理解・記憶の具体的な技術として、宗教画や宗教文学の技術が、記憶術のイメージとの関係で磨かれ、さらに記憶術の魔術化・秘術化がその後の科学的方法の確立にまでつながっていくことになる。
このように記憶術というものが、宗教、倫理、哲学、心理学、芸術、文学、科学的方法等々の歴史と重要な関連を持っていることを示すとともに、それらを俯瞰してみせるという第一級の名著。特に西洋思想・哲学に興味がある人は「読んでおいた方が良い」ではなく「読んでおかなければならない」本だ。
ギリシャ時代の詩人シモニデスが、記憶したい事柄と建築を結び付けたことに始まるという記憶術は、その後弁論家が弁論を覚えるために、宗教家が神の言葉を得るために、さまざまな応用・広がりを見せていく。しかし、その中心にあるものは「場」と「イメージ」を結び付けることであることに変わりはない。
記憶のための建築が時代によって変化していくとき、記憶術もその影響を受けざるを得ない。同様に記憶術の体系化の歴史は、場としての建築や芸術、イメージとしての宗教・思想の変化の歴史である。中世において記憶術の再編を行ったのはスコラ哲学で知られるトマス・アクィナスであり、この哲学がカトリック教会の公式神学となったことを考えても、そのことは明らかである。
宗教的道徳観、倫理観の理解・記憶の具体的な技術として、宗教画や宗教文学の技術が、記憶術のイメージとの関係で磨かれ、さらに記憶術の魔術化・秘術化がその後の科学的方法の確立にまでつながっていくことになる。
このように記憶術というものが、宗教、倫理、哲学、心理学、芸術、文学、科学的方法等々の歴史と重要な関連を持っていることを示すとともに、それらを俯瞰してみせるという第一級の名著。特に西洋思想・哲学に興味がある人は「読んでおいた方が良い」ではなく「読んでおかなければならない」本だ。