天国でまた会おう(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫) の感想

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参照データ

タイトル天国でまた会おう(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
発売日販売日未定
製作者ピエール ルメートル
販売元早川書房
JANコード9784151814525
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » フランス文学

購入者の感想

 この著者の作品は、これが四作目である。時には辟易としたり、反発を覚えながらも、なぜか惹かれる、それは小説として面白いからだろう(しかし、楽しい、とは違う)。この著作は、そういうおどろおどろしさの多い著者の作品の中で、珍しくそう言う表現の少ない、納得のできる、楽しめる筋書きだった。

 舞台は、第一次世界大戦の終結する数日前から始まり、その後の数年間の出来事である。主人公は、実直だが少し鈍い、元兵士、アルベール・マイヤールである。彼の命を助けたが為に、顔の半分を砲弾で切り取られた金持ちの息子の元兵士、エドゥアール・ペリクールと、自分の出世の為には部下を踏みつけにしても這い上がる元中尉、プラデルが主人公を取り巻く人物として登場する。その他に、顔の半分を失った男の姉、経済界でカリスマ的な存在の父親、などが筋書きを彩っている。この辺の配役に、この小説家の妙味を感じるのだった。

 戦後の混乱の様子が、帰還兵士に対して十分な補償や援助が行き届かなかったことが描かれており、フランスでさえもか、と当時の時代背景が興味深かった。また、軍人を、戦争が無ければ何もできないのだ、という描き方には、この物語に出てくる軍人に限られているのだろうが、ある種の皮肉な見方をする、著者の考えが表れていると思った。

 背景や話しの持っていき方などには、滑稽で大げさなところや筋書きが粗いところもあるが、今から九十年以上の前の、1918年〜1920年の話しなので、その辺は許容できる。これから読む人の為には詳しく書けないが、結末も私にとっては、納得のいくものだった。

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