垂直の記憶 (ヤマケイ文庫) の感想
参照データ
タイトル | 垂直の記憶 (ヤマケイ文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 山野井泰史 |
販売元 | 山と渓谷社 |
JANコード | 9784635047210 |
カテゴリ | » 本 » ジャンル別 » ノンフィクション |
購入者の感想
幼少期より山や海などの自然に親しみや愛着を感じて来ましたが、それも身近に接した範囲に限られ、日常の結界を越えた大自然に足を踏み入れる体験は、自分のような普段着の気ままなアウトドア派には畏れ多い。
本書は単行本以来、愛読し続けて今日に至りますが、今更文庫版の再販を知って購入。
形こそ手のひらサイズに縮小されましたが、内容に変わりはなきにも関わらず、まるで更に集約されたように、より注目性が深まる印象を受けました。文字も読みやすいサイズです。
本書は既に過ぎ去った昔の回想録なのですが、時折手に取る毎に、著者の現在進行形の息づかいが聞こえて来るようです。
エピソードの一つ一つ、極地の最中に在って、現場の有り様の詳細が着実に記されているのは、きっと著者が客観性を保ち続けていたからでしょう。
だからこそ、絶望的な状況下からの生還も果たせたのだと思います。
人にとって非日常の大自然は厳粛で近寄り難い世界であり、且つ日常に活きるヒントもふんだんに含まれ、常に可能性が広がっているんですよね。
本書は単行本以来、愛読し続けて今日に至りますが、今更文庫版の再販を知って購入。
形こそ手のひらサイズに縮小されましたが、内容に変わりはなきにも関わらず、まるで更に集約されたように、より注目性が深まる印象を受けました。文字も読みやすいサイズです。
本書は既に過ぎ去った昔の回想録なのですが、時折手に取る毎に、著者の現在進行形の息づかいが聞こえて来るようです。
エピソードの一つ一つ、極地の最中に在って、現場の有り様の詳細が着実に記されているのは、きっと著者が客観性を保ち続けていたからでしょう。
だからこそ、絶望的な状況下からの生還も果たせたのだと思います。
人にとって非日常の大自然は厳粛で近寄り難い世界であり、且つ日常に活きるヒントもふんだんに含まれ、常に可能性が広がっているんですよね。
一気には読めなかった。
ひとつひとつの登攀の記録は短い言葉で淡々と書かれているけれど、重く心にのしかかってきて、
高所の薄い空気が私を包んでいるかのような錯覚に陥りました。
物語や旅エッセイを読むように軽やかにページをめくることができなかったです。
「凍」のように一気に読むこともできなかったです。
一章を読み終えるたびにフーと深いため息がでてしまう。
それはどうしてなのかって考えました。
人を寄せ付けない山とそれに挑んだクライマーしか知らないはずの出来事を、
こうしてクライマー自身の起こした文字で読むことで、
私は目撃者になってしまったということだろうと思います。
なんという世界をみてしまったのだろう。
第7章ではページを繰る指先が、少し震えてしまいました。
当事者以外の人の言葉で語られる出来事というのは
やっぱりどこか浮世離れしていて、遠い世界での出来事にしか思えない。
同じ言葉でも、台詞めいて聞こえてしまう。
どんなに恐ろしい状況でも、当事者ではない著者が語ることで
読み手は著者の背中越しにそろ〜っとその怖い状況を垣間みるだけで済む。
でもこの本にはそういう部分が全くない。
嘘の香りも誇張の香りも全くしない。
自分自身を大きく見せようとしないクライマーの性格がよく見て取れる文章でした。
私が山野井さんを知ったのは「ソロ」が山渓で連載されていた時です。
そう年齢もかわらないのにすごいことしてる人がいるんだな、と。
この本で私はその「すごいこと」の目撃者になってしまったのです。
ひとつひとつの登攀の記録は短い言葉で淡々と書かれているけれど、重く心にのしかかってきて、
高所の薄い空気が私を包んでいるかのような錯覚に陥りました。
物語や旅エッセイを読むように軽やかにページをめくることができなかったです。
「凍」のように一気に読むこともできなかったです。
一章を読み終えるたびにフーと深いため息がでてしまう。
それはどうしてなのかって考えました。
人を寄せ付けない山とそれに挑んだクライマーしか知らないはずの出来事を、
こうしてクライマー自身の起こした文字で読むことで、
私は目撃者になってしまったということだろうと思います。
なんという世界をみてしまったのだろう。
第7章ではページを繰る指先が、少し震えてしまいました。
当事者以外の人の言葉で語られる出来事というのは
やっぱりどこか浮世離れしていて、遠い世界での出来事にしか思えない。
同じ言葉でも、台詞めいて聞こえてしまう。
どんなに恐ろしい状況でも、当事者ではない著者が語ることで
読み手は著者の背中越しにそろ〜っとその怖い状況を垣間みるだけで済む。
でもこの本にはそういう部分が全くない。
嘘の香りも誇張の香りも全くしない。
自分自身を大きく見せようとしないクライマーの性格がよく見て取れる文章でした。
私が山野井さんを知ったのは「ソロ」が山渓で連載されていた時です。
そう年齢もかわらないのにすごいことしてる人がいるんだな、と。
この本で私はその「すごいこと」の目撃者になってしまったのです。