モスクが語るイスラム史―建築と政治権力 (中公新書) の感想

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タイトルモスクが語るイスラム史―建築と政治権力 (中公新書)
発売日販売日未定
製作者羽田 正
販売元中央公論社
JANコード9784121011770
カテゴリ歴史・地理 » 世界史 » アジア史 » その他

購入者の感想

ユニークな本である。モスクはアラビア語でマスジドという。キリスト教の教会や仏教の寺院などとは、モスクは大分性格がことなる。教会や寺院は、拝む対象のキリストの磔刑像やマリア像、あるいは仏像が置いてあって、それを信仰する場所である。一方イスラームの信仰対象はアラビア半島のメッカのカーバ神殿の聖石だけである。モスクは「メッカに向かって祈るために設定される場所」であって、かならずしも建築物である必要はない。極端な話、自分の部屋でコンパスでメッカの方向を確認して、イスラームのやり方にならってお祈りをすれば、そこが「モスク」である。イスラーム創始時のモスクのあり方はそうであって、現在でも「方向を定めて礼拝する場所」という性格は、大方変わらない。一方、建築物・イスラームの人々の交流の場としてのモスクの発展というものがあって、本書ではこの面が詳述されている。最古の建築物モスクは、メディナにある「預言者のモスク」。これは預言者ムハンマドの家であって、もともと長方形の信者を集める集会所を兼ねた掘立て小屋のようなものであった。時代が進むにつれ、ビザンチンのキリスト教寺院の様式を取り入れた建築物としてのモスクが多数建造され、イスラーム世界のなかでも地域ごとに様々な様式のモスクが生まれていく。建築物としてのモスクは、時の権力者の威光の内外に知らしめる役割が与えられるようになり、ついにオスマン時代に入って、東西交通の要、イスタンブルに威容を与える巨大モスク群に結実する。この本は、本来「建築物」である必要のない「礼拝の場所」であったモスクがイスラームの威光を高めるための建築物として発展していった過程を丹念におった興味深いイスラーム史であるといえる。

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