Hard Times: BBC (BBC Radio Presents) の感想

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参照データ

タイトルHard Times: BBC (BBC Radio Presents)
発売日販売日未定
製作者Charles Dickens
販売元Random House Audio
JANコード9780553526479
カテゴリ » 洋書 » By Publisher » Random House

購入者の感想

冒頭から紳士トマス・グラッドグラインドは高らかに言う−「人生で必要なのは『事実』だけなんだよ」と。
原文の英語ではさらに明確で“In this life, we want nothing but Facts, sir; nothing but Facts!”、つまり“nothing but”が効いて「事実以外に必要なもの、そんなものは無い」という、より強いニュアンスになる。
要約するとこう言うことだ。人間が科学によって明らかにした「事実」を学び、理解し、実践することが、人間が最も幸せになる最善の方法であると。
冒頭の紳士はその主義を標榜し、さらに学校経営者としてその主義を教育によって子どもに当てはめようとする。もちろん自分の子どもへもだ。
その紳士は、子どもを小さな容器に例える。教育とは、その小さな容器に事実をいっぱいに満たしてやることだと。

事実優先主義という知と心との関係や、教育など現代にも通じる人生の重要課題が簡潔明瞭な文章で次から次へ現れ、異国の古い小説であっても読者を飽きさせない(本作品の英国での初出は1854年。つまり日本では明治時代より前)。

しかし、ディケンズは多くの登場人物を使った多角的な構成で、紳士が完璧なものと捉えるその主義を、まるで精巧にレゴで作ったお城を粉砕するかのように壊しにかかる。
例えば、紳士の娘ルイーザには、紳士が父親として最良の道として政略的な結婚をさせる。確かに見た目では幸せを得られた。
その一方で、感情をきれいに畳んで心の中にしまうことを身に付けていた娘は、自分が出会った様々な人間の様々な人生を見るにつけて、本当の幸せは何かを自分なりに描いてみようとする心の動きが生じる。
しかし、父に空想を封印されてきた彼女は、幸せの形を描こうとすればするほど心が塞がってしまい、ついに「お父様は、生きるよすがとなる小さな日々の喜びを、何から何までどうして取り上げておしまいになったのです?私はそのため死んでいるとしか思えないような状態で生きてきました」と父に向って叫ぶ。

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