映画「たまこラブストーリー」 [Blu-ray] の感想

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参照データ

タイトル映画「たまこラブストーリー」 [Blu-ray]
発売日2014-10-10
監督山田尚子
出演洲崎綾
販売元ポニーキャニオン
JANコード4988013054288
カテゴリ » DVD » ジャンル別 » アニメ

購入者の感想

タイトルに「ラブストーリー」と銘打たれているように、この作品では初恋のときめきやとまどい、
ときに滑稽な空回りなどがきわめて瑞々しく描かれます。
しかし同時に、「恋」は、作品のなかで様々に描かれる「変化」のなかの一つの形態にすぎない、という言い方もできます。

主人公の北白川たまこは、小学生のころに慕っていた母を亡くして以来、
「母のいなくなった後の”日常”」を懸命に築き上げ、維持してきました
(このあたりについては、原作テレビシリーズ『たまこまーけっと』で触れられていますが、
 未見でも映画単体で楽しめるように配慮されています)。
だから彼女は、いまある「日常」が「変化」していくことを恐れています。

そんな彼女が、幼馴染みに告白されたこと、高校3年生という、進路を意識せざるを得ない学年になり、
周囲の友人たちが将来を考えはじめたことをきっかけに、「変化」と向きあう姿が描かれます。
変わることと、変わらないこと。つねに流れつづけている時間のなかで、本質的に「変わらない」というのはどういうことなのか。

この作品はそのような主人公・たまこの物語であると同時に、たまこの周囲の友人たちが、
進路という「変化」にそれぞれ向きあっていく姿を丁寧に掬いとった、群像劇の側面ももっています。
また、たまこの暮らす商店街の人々のキャラクターも、魅力的に描かれます。

80分ほどの上映時間にそれだけの要素を詰め込んでしまったら、全てが中途半端になってしまいそうな感じもしますが、
この作品はそうなっていません。
それは、それら友人や町内の人々の姿、ちょっとした会話の断片にいたるまでが「変化」というひとつのテーマに基づいて描かれ、
それが主人公・たまこというひとりの少女の中に影響として「降り積もっていく」ような描かれ方がされているからです。

その細やかな描写は、蛇口から滴り落ちる水が、コップに一滴ずつたまっていく様子を連想させます。
コップが一杯になり、水が縁から溢れだしたとき、たまこはどうするのか。

たまこの父、豆大と同世代の者です。娘もいます。もうたまこたちより大きいですが。
映画館では、両手の指以上の回数を観ました。その内何度かは家内と一緒に。
他の方も書かれているように、青春映画の傑作です。

たまこやもち蔵たちに、昔の自分が感じた気持ちを呼び起されるとともに、年齢的に
豆大に思うところも多々ありました。
娘を見る父のまなざし。いつもと違う様子の娘に、直接問いただすようなことはせず、
それでいてちゃんと気遣っている豆大のセリフ。病院の廊下でのもち蔵への一言。
「お父さん」もいろいろ考え、思うところがあるのです。

たまこやあんこからすれば「父」ですが、祖父の福からみれば「息子」で、母親のひなこ
にとっては「夫」の豆大。一人の人間にもいろんな面があり、さらに時をさかのぼれば、
両親は若く、恋人同士だった時代があって、自分たちと同じような思いを経験してきた
ことに気づいた娘、たまこ。
こうして、「家族」についても、ちゃんと描かれているので、作品に奥行きがでているの
だと感じました。

今、このタイミングでレビューを書いたのは、もし可能ならば一度は映画館で観てほしい
からです。数少ないですが、まだギリギリ上映しているところがありますから。
この作品はとても「映画」であることを意識したツクリになっています。特にラストシーン
は、映画館で観ると最大の効果が得られるようになっています。
もし、ムリならば、出来るだけ映画館で観るのに近い環境でご覧になるのをおすすめ
します。非常に映像の情報量が多く、ムダのない作品なので、見逃しの無いように
鑑賞されるのがよいかと思うので。

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