資本主義と自由 (日経BPクラシックス) の感想

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タイトル資本主義と自由 (日経BPクラシックス)
発売日販売日未定
製作者ミルトン・フリードマン
販売元日経BP社
JANコード9784822246419
カテゴリ » ジャンル別 » 社会・政治 » 政治

購入者の感想

序章「十九世紀の自由主義者は、自由の拡大こそ福祉と平等を実現する効率的な手段だと考えたが、二十世紀の自由主義者は、福祉と平等が自由の前提条件であり、自由に代わり得るとさえ考えている。そして福祉と平等の名の下に、国家の干渉と温情主義(パターナリズム)の復活を支持するようになった」
 と現代の「リベラリズム」(自由主義)を批判する。基本的には、ここの温情主義に対する「規制緩和」というか、マネタリストと呼ばれるように政府の役割を減らすというところを目指すのが、フリードマンの立場か。ある意味、人間に信頼を置いているがゆえに、マーケットにまかせるという点があると。逆に政府への不信が大きいとも言えるか。自由主義と温情主義と。

「自由主義が根本的に恐れるのは、権力の集中である。ある人の自由が他の人の自由を妨げない限りにおいて個々人の最大限の自由を守ることを、自由主義者はめざす。この目標を実現するためには権力の分散が必要だというのが自由主義者の考えだ。」
と3章。あとは「ケインズ政策」の乗数理論批判の5章、あとはバウチャー制度などが興味深かった。
行動経済学などからすれば、「エコノ」として各人が振る舞えることを前提にし過ぎている、という批判が成り立つだろうか。とはいえ、まだまだ政府の無駄というところでフリードマンの新しさはあるように思う。

本書は「新自由主義」と呼ばれる政策の理論的支柱となっている本である。

これはとにかく評判が悪い。
新自由主義は、強者が弱者を切り捨て、貧困者に”自己責任”を押しつける、金持ちのための政策だといわれる。日本でこれ(の一部)を実践しようとした小泉構造改革は、格差を拡大させたといった、根拠のない風説が巷に流れている。経済のことをあまり知らなかった私も、貧困を自己責任とするこのような精神主義には嫌悪感を抱いていた。

しかし本書を読めばこれらが全て誤解であることがわかる。

本書は、現行の社会保障政策の廃止を主張する一方、「貧困対策」と題された第12章において、負の所得税による貧困者に対する再分配が主張されている。弱者を見捨てることなど主張されていない。
しかも、この現行の社会保障政策廃止を主張する理由がまたおもしろい。一般に想像されるように、福祉による「甘え」を許さず自助努力で這い上がらせるため、といった精神主義的理由ではなく、善意による福祉政策が貧しい人々を、さらに不幸な境遇に追いやるからだという。
本書で廃止が主張されている中でわかりやすい例が「最低賃金法」である。労働市場で均衡する賃金水準より高い最低賃金が強制された場合、企業収益が圧迫され、企業の雇用数が減り失業が増加する。その結果、今雇用の椅子に座っている労働者は得をするが、職を失った人は最低賃金以下の給料さえもらえなくなり、労働者階級の所得が一段と不平等になるのだという。
同様のことが「労働組合による賃上げ」でも起こり得る。それ以外にも、「農産物価格支持制度」、「公営住宅」、「公的年金」、「公正雇用慣行法」、「業務独占資格」、「バラマキ公共事業」、「関税」などが、同様の理由で廃止が主張されている。さらに本書では、これらを強力に主張する集団が、利害関係のない善意の第三者ではなく、既得権を持つ集団であることを実例を以て明らかにしている。つまり、一見心優しく見える福祉政策が、既得権者の為だけに行われる偽善的な政策であるということを、本書は強く訴えている。貧しい若者から、富める老人に逆再分配されている、日本の現行の公的年金制度を見れば明らかであろう。本書はこのような現代日本の惨状を半世紀も前に予見していた。

小泉構造改革のバックボーンとなったフリードマンは強者の論理である。
この本の解説を書いているのは小泉政権の側近だった高橋洋一氏である。
小泉さんも、竹中平蔵さんも読んでいるはずである。

本書の中でフリードマンは、資本主義のもとで政府がやってはいけないコトを14か条にして列挙する。
そのうちのひとつが
13,営利目的での郵便事業の法的廃止
である。小泉さんがこれを旗印に選挙に勝ったことはあまりにも有名だが、
小泉さんは国民が受け入れやすいところから始めたようだ。
(小泉さんは巨大な郵貯マネーの方に関心があったのだけど)
14,公有公営の有料道路の廃止
「日本で言えば道路公団民営化だな」と、簡単に結びつけて背景ない。何でも民営が良いわけではない。
民営なら限り無く通行料を上げても文句が言えないことに気付かねばいけない。
フリードマンが目指すのはとにかく極端だと思えるほどの「小さな政府」国は手を出すな
というのが彼の論なのである。
フリードマンは国がやっている色んなものを廃止せよという。
11,平時の徴兵制(ゆうじには徴兵しても良いということだ)
12,国立公園
10,公営住宅
4,家賃統制、全面的な物価・賃金統制
3,産出規制
6,細部に渡る産業規制
8,事業。職業の免許制度
これは医師免許などを含めてである。但し資格制度は残し、資格をもっ対しと持たない医師が混在する。
「風邪程度なら資格の無い医師でいいか」となる、というのだが
「貧しければ資格のない医師」になるに決まっているではないか。
7,ラジオとテレビの電波規制
これも廃止し、電波オークションで売れと言っている。これに関してはそれで良いかもしれない。
1,いわゆる農業保護
米に補助金などというのは言語道断だということだ。
2,輸入関税または輸出制限
ここらあたりをTPP賛成論者は持ち出してきて、理論的支柱とする懸念がある。
8,現行の社会保障制度

解説で、サミュエルソンとの対比が書かれているので、それを踏まえて書いておこう。
サミュエルソンは、市場の安定性についての研究を多くしていることから、市場メカニズムに対してフリードマンよりずっと懐疑的である。つまり、サミュエルソンは市場も政府も信用しないが、その上で政府の役割を考えざるをえない、というスタンス。他方でフリードマンは政府に対する懐疑に比べて、市場に対して手放しで信用する傾向が強い。この楽観主義は、十分に裏付けられたものとは、私は考えない。また、サミュエルソンは厚生経済学の分野でも重要な貢献を多々しており、経済学における価値判断の問題の持つ難しさを十分踏まえていた。それと比べると、フリードマンの価値判断に対するスタンスは、ロビンズ以降の著作とは思えないほど慎重さを欠いている。彼の政策の明快さは、この無邪気さゆえである点に注意したい。

逆に言えば、その点を批判的に検討していく作業が重要だ、ということ。リバタリアニズムに批判的なスタンスを取る人こそ、本書を手に取るべきだ。星5つは、検討材料としての重要性に対する評価。本書の主張に、私はほとんど同意しない。

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