出世花 (ハルキ文庫 た 19-6 時代小説文庫) の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトル出世花 (ハルキ文庫 た 19-6 時代小説文庫)
発売日販売日未定
製作者高田 郁
販売元角川春樹事務所
JANコード9784758435550
カテゴリ »  » ジャンル別

購入者の感想

不義密通をして出奔した母、その妻を追って故郷を出た父。
そんな父娘を救い、受け入れてくれたのが、弔いを専門にする寺だった・・

父は命を落とすが、少女は縁と言う名をもらい、死者を送る手伝いをすることになる。
縁は人の優しさに触れ、生きるとは何か、命とは何か、関わる様々な人生を見て行きます。
寺に暮らす人物もそれぞれ悲しい事情を抱え、縁に関わる人もまた同様。
死者を丁寧に弔うと言う事が生きてる者を癒していき、人からは蔑まれながらも縁は健気に勤めていきます。

天涯孤独の縁。
でもその境遇を悲しむ事も無く、優しさを忘れず懸命に生きる縁の姿が胸を打ちます・・
続きが出ると言う事なので、今からとても楽しみです。

髪切魔と言う謎が解決していないので、その辺が出るかなと期待しております。
縁も大人の女性になって、これからどんな人生を送るんだろう、とも。

  「出世花」は下落合からはじまる物語だが、「落合螢」「偽り時雨」「見送り坂暮色」と読み進み、主人公のお縁たちの出向く先が広がるほど、江戸の地図があったらなお嬉しという気分になった。内藤新宿、神田明神などの他に、なじみは薄いがなんともいい味の地名が顔を出し、お縁たちが暮らしあるいは事情があって出向いていく先々が、細やかに描かれている。草木や生き物からも、江戸やその周辺の四季を楽しませてくれる。

 それにしても、お縁はかなり不思議なキャラクターだ。生地を離れ、父母ともまともな間柄ではない不幸な生い立ちである。武家の出だが、幼くして身寄りをなくして世話になった寺で、若い娘ながら自ら選んで遺体を清めて火葬する生業に就く。当時は火葬をつかさどるお寺の格式は低いもので、お縁たちは屍洗いと蔑まれる身分だったそうだ。多くの死と屍体を洗い清める場面が字数を尽くして描かれているにもかかわらず、この一連の物語は清清しく涼しい。心を尽くして看取り見送ることが、逝く者のみならず送る者を救うものだということをお縁の手と心が語ってくれている。

 お縁は謙虚で聡明で無欲である。かといって醒めているわけではなく、繊細で素直であたたかい。世間知らずでおいおいと思うほどおっとりしているのだが、思うところがあると後へはひかない強さと行動力もある。こういうお縁に、自らの苦界に生きるよすがを語る娘や、誇りと哀しみや僻みを預けたりぶつけていく者たちを、
お縁は黙することで守っているようだ。
 この一見、生き仏様のような娘は、その実大変食いしん坊である。お行儀がいいのが救いなのだが。
 いずまいの美しい物語に出会えて嬉しいのだが、ただ一つ残念なのは、お縁の好物、桜花堂の桜餅がフィクションだということである!

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

出世花 (ハルキ文庫 た 19-6 時代小説文庫)

アマゾンで購入する
角川春樹事務所から発売された高田 郁の出世花 (ハルキ文庫 た 19-6 時代小説文庫)(JAN:9784758435550)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.