調査報告 「学力格差」の実態 (岩波ブックレット) の感想

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タイトル調査報告 「学力格差」の実態 (岩波ブックレット)
発売日販売日未定
製作者志水 宏吉
販売元岩波書店
JANコード9784002709000
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 教育学 » 一般

購入者の感想

「本書の目的は、私たち研究チームが2013年11月に大阪府内の公立小・中学校で実施した小学校5年生および中学校2年生を対象とした学力調査のデータに基づいて、現代日本の子ども供たちの学力格差の実態を明らかにすることにある」(p.2)と記されている。著者等はほぼ同一の小中学校を同和地区の学力実態調査として1989年に、更に学力低下論争下の2001年に調査し、本書はこれら3回を比較考察する。初回調査の目的から、調査校が全国平均より親の経済状況がやや厳しい地区ではある(一応の留意点)。
 実施された3回の学力調査は、「ゆとり以前」(1989年)→「ゆとり時代」(2001年)→「ポストゆとり」(2013年)となる。明らかとなるのは、「ゆとり時代」の学力低下が実に大きかったこと。対して、2013年には「弱いV字回復」が見られること(結果的に1989年の子どもたちはかなり高い基礎学力水準だったとわかる)。ここで、2013年を評価すると、塾に行ってない子どもの底上げが顕著で、2001年の低得点層はかなり減少した。つまり、学校による教育的働きかけがこの学力回復を生み出したわけで、近年流行の「格差拡大」ではなく、現在の子どもたちの学力は低学力層の底上げで格差縮小を果たした。

 2013年をもう少し細かく(最近あまりされなくなった性差で)見ると、国語は小・中学校とも女子の方が高い。算数では差はほとんどないが、数学では女子の方がやや高くなっている。数学は、小学校や中学の国語で果たせた学力回復を達成できず、これが男子の学力低下で生じている。数学女子は準V字回復であり、男子も国語は準V字回復なのだが。本書にはその理由を示唆するデータはないが、男子の数学得意層が私立中に流れたのが一因かも、とは述べている。
 そういう詳細な学力調査データが本書には記され、その他に親へのアンケート結果もあり、社会関係資本(学校・家庭・地域における人と人とのつながり)と学力の相関も指摘される。全般に驚くような解釈が示されてはいないが、小中学生の(学力面の)現状に関心がある方には考えを誘われる部分も多いだろう。

最近は学力格差の解消のために、塾に行かれない子どもへの面倒見とか授業時間と増加とかいろいろ策を講じられているが、これを読むと、格差の本質はもっと別の所にあると思う。つまり、多くの親たちに耳の痛い話も、ちゃんと言わなければいけない、ということだ。

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