夏の花 (集英社文庫) の感想
参照データ
タイトル | 夏の花 (集英社文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 原 民喜 |
販売元 | 集英社 |
JANコード | 9784087520415 |
カテゴリ | 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » は行の著者 |
購入者の感想
この『夏の花』は、私の購読している地元新聞では「中学生向き」の図書として推薦されていた。しかしながら、その内容は決して中学生のみならずその親御さんたち、いや、日本人として是非とも読んでおくべき1冊となろう。このような「原爆」を題材とした小説には、例えば映画にもなった井伏鱒二さんの『黒い雨』(1965年)などが、同じくコミックの世界でもこうの史代さんの『夕凪の街 桜の国』(2004年)などがあるわけだが、書題ともなっている「夏の花」を中心とした三部作で編述されるこの掌編集もそれらに劣らないものだ。
作者の原民喜さんは、1905(明治38)年広島県で生まれ、慶應義塾大学文学部英文科を卒業、『三田文学』などに数々の詩や小説を発表していたが、1951(昭和26)年、自ら命を絶った。「夏の花」は1945(昭和20)年8月、疎開先の広島市で原子爆弾に被災した原さんの原体験を基にして書き下ろされたもので、被爆前の一家の生活を描いた「壊滅の序曲」と被爆後の状況を語る「廃墟から」で作品を構成している。そして何より感じられるのが「このことを書きのこさねばならない」(夏の花)という原さんの強靱なる意志だろう。