世界史の中のパレスチナ問題 (講談社現代新書) の感想

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参照データ

タイトル世界史の中のパレスチナ問題 (講談社現代新書)
発売日販売日未定
製作者臼杵 陽
販売元講談社
JANコード9784062881890
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

購入者の感想

「イスラーム」「イスラエル」を主要テーマとして論陣を張ってきた中東研究のエキスパートである著者が、パレスチナ問題について広範多岐な内容を扱いながら纏め上げた1冊。これまでも、ミズラヒーム(中東イスラーム諸国出身ユダヤ人)に焦点をあててイスラエルの抱える構造的問題に鋭く迫る等、広範な知識と深い洞察を持って中東を見つめてきた著者が、「パレスチナ問題の歴史教科書」を作成するつもりで著した待望の書。新書版でありながら400ページに達する小さな大著。

目次にも見られる通り、各部が5講義からなる3部構成で、それぞれ前史・発生史・現代史とも区分可能。最後には、この問題と日本との関わりについて、日本が決して「手を汚していない」わけではなく、また、欧米経由の視点に規定された理解や関係構築しかできていない点を指摘している。

各部のタイトル(大項目)や、その中の各講義のタイトル(中項目)を見る限りは、所謂世界史教科書的な通史項目が並べられているが、各講義の中にある小項目のタイトルを見ると、いかに広範多岐な内容が扱われているか、が見て取れる。そして実際に読んでみると、著者の広範で深い見識を改めて実感させられた。

パレスチナ/イスラエルのどちらか一方に肩入れするのでもなく、それぞれが内部に抱える問題をも鋭く指摘しながら、同時に、関係する大国(委任統治前後の英国、そして現在における米国)の重い責任を問うている。著者が記す通り、この問題は泥沼化しており、本書の中でパレスチナ問題の解決の糸口が示されているわけではない。かえって問題の複雑さ・解決の困難さを再認識させられるが、それが著者の意図でもあろう。

これだけ広範多岐な内容を扱いながらも、それでも尚、紙面の制約上、著者が惜しみつつ割愛せざるを得なかった項目が多数あるであろうことが感じられるほど、著者の知識の広がりと熱い想いが本書には迸り出ている。巻末には、良く厳選された日本語文献の一覧もあり、より詳細な探求への手助けにもなっている。本書を、パレスチナ問題のハンディ百科便覧として手許に置く用い方もあり得よう。(欲を言えば、巻末に索引があれば更にありがたいが、それは過ぎた要求というものであろう。)

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