イノベーションの最終解 (ハーバード・ビジネス・セレクション) の感想

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参照データ

タイトルイノベーションの最終解 (ハーバード・ビジネス・セレクション)
発売日販売日未定
製作者クレイトン・M・クリステンセン
販売元翔泳社
JANコード9784798132310
カテゴリ » ジャンル別 » ビジネス・経済 » オペレーションズ

購入者の感想

ビジネス界の古典的名著「イノベーションのジレンマ」「イノベーションの解」に続き、本書でクリステンセン教授の「イノベーション三部」は完結した。教授は、「イノベーションのジレンマ」では既存企業が破壊的イノベーションの前に敗れ去るのは、それまでの「正しい経営」が原因であるという驚くべき理論を打ち立てた。続く「イノベーションの解」ではどのように破壊的イノベーションを構築すべきかの方法を示した。そして本書では、イノベーションを起こしやすい環境や未来を予測する方法を説く。原題は「Seeing What’s Next」である。

全体は2部から成っている。1部は、「理論を分析に用いる方法」としてイノベーションの3つの理論、すなわち1.破壊的イノベーションの理論、2.資源・プロセス・価値基準の理論、3.バリューチェーン進化の理論を「戦略のレンズ」として使うことで業界の将来を予測し、イノベーションを起こすことができると主張している。具体的には、ビジネスチャンスのきざし、競争相手の実力、戦略的判断、非マーケット要因の見極めの手法が記述される。第2部では、この理論をアメリカの5つの業界(教育、航空、半導体、医療、通信)と海外に適応して各市場を分析して示す。したがって、本書には新しい理論は登場せず、あくまで周知の理論をツールとして用いて現実の市場を分析し、予測し、適切な戦略を構築することを目的としている。

従来の予測法と言えば、過去の実績の分析からその延長を測ったり、模範的な企業をベンチマークするのが主流であった。しかし、変化の多い未来の予測においてその方法は使えないとクリステンセン教授は退けている。しかし、優秀な理論を使えば過去を分析し、未来を見通すことができ、採るべき戦略が明らかになるとして、その方法を詳しく説明している。その実例として6つの業界、市場を分析して見せるのである。本書は、新しい理論を学ぶのではなく、理論を活用して将来への洞察を得るための実践的なノウハウ書である。

名著”イノベーションのジレンマ”シリーズ完結編となる一冊です。

破壊的イノベーションの理論をまとめ、
破壊的イノベーションが上手くいくのはどんな時かを詳細にまとめられています。

また、格安航空会社やオンライン教育など、現在流行の兆しを見せている
イノベーションビジネスの事例を論じ、今後うまくいくかどうか分析を加えています。

ベンチャー企業経営者や起業家になりたい方、
中小企業経営者など多くの方に読んでいただきたい一冊です。

以下に私がこの本を読んで参考になった部分を、引用してご紹介します。

・変化のシグナルの質問に答えるには、次の三種類の顧客集団を評価する必要がある。
1.製品を消費していない顧客や、製品を不便な環境で消費している顧客(無消費者)
2.製品を消費しているが、ニーズが満たされていない顧客(満たされない顧客)
3.製品を消費しているが、ニーズが必要以上に満たされている顧客(過剰満足の顧客)

・ここで重要なのは、ジェットブルーなどの格安航空会社が、
既存企業が反撃できないようなビジネスモデルをすでに構築しているかどうかだ。
革張りのシートやディレクTVでは、十分とは言えない。
それらは資源に依存した強みであり、したがって簡単に模倣できる

◆破壊の輪を動かす6つの要因
1.人材市場:柔軟で起業家精神とリスク選好を促し、企業間の人材移動を可能にする人材市場の存在
2.資本市場:新規企業が立ち上がり、破壊的イノベーションの機会を追求しながら成長するのを助ける資本市場。
  負債による資金調達を促す資本市場政策は、破壊の輪の妨げになる
3.制約の少ない製品市場
4.破壊を支えるインフラ:適切な税制、企業の創設を促すインフラ、
  破壊のプロセスに「潤滑油」を供給する仲介機関
5.活気ある業界環境
6.研究開発

最終解と言うことで、期待を持って手にした本書。過去にクリステンセン教授の書籍を読んだ人にとっては、裏切られることはないが、大きな発見はないと思う。が、各章ともコンパクトかつ必要十分に纏まっており、おさらいにはもってこいの一冊。

本書で注目したいのは、「動機づけ」と「能力」によるマトリックス図。足かせ、温床、ジレンマ、燃料不足の4象源による区分けは、簡潔かつ的確で、この概念を学べるだけでも、本書は有益な一冊であるといっても良いだろう。
ジレンマに陥っている企業は多いのは容易に想像がつく。優秀と言われている社内の人材を集めてきて、ゼロから事業を作り上げても上手くいかなかった経験を持っているエグゼクティブは多いはずだ。

なぜだろうか?
そもそも論として、彼らには事業にフルコミットする動機を欠いている場合がある。マネージメントばかりが先行し、真に必要とする資源を欠いている場合も多い。こういった背景もあり、最近はM&Aで、手っ取り早く事業を買収してしまう方法を選択する企業が増えているようにかんじる。本書でも述べられているとおり、事業の収益面とシナジー面での関与にとどめ、買収後の事業コントロールはほとんど行わない。モチベーションを維持しつつ、リスク要因を包括することで、既存の大企業はますます強靭になって行く。

本書の核は、p.377以降の主要な概念のまとめを読めば、ざっとさらうことは可能だ。が、それぞれの概念を理解するに当たっては、やはり各章をじっくり読み込む方が理解度は高まるだろう。事例として、教育、航空、半導体、医療、通信が挙げられているが、日本人の今後のビジネスドメイン戦略(日本に限る場合)を考えると、医療、教育、半導体の順で参考に出来るのではないかと思う。通信は規制が多すぎるし、航空は競争優位のビジネスモデルを立てにくい。

が、大切なことは、各業界の事例を他の業界に応用する思考力を鍛えること。ケースは所詮ケースと割り切りつつも、都度都度ケースを省みつつ事業の舵をきっていくことが、イノベーションの実現に繋がる。

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