スペクトル幾何 (共立講座 数学の輝き 3) の感想

　リーマン多様体上のラプラス作用素の固有値全体をスペクトルといい、スペクトルと多様体の幾何学的性質の関係を調べる分野を「スペクトル幾何」という。本書はスペクトル幾何に関し和書の成書で初めて採り上げられる話題を多く含み、微分幾何学愛好家の要望に応える本格的な解説書と言える。

　本書は大きく二つの部分に分かれ、第5章までの前半部では個々の固有値の評価に関する重要な成果が解説され、後半部の二つの章ではスペクトルとリーマン多様体の幾何に関する素晴らしい結果が紹介されている。