幼さという戦略 「かわいい」と成熟の物語作法 (朝日選書) の感想

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参照データ

タイトル幼さという戦略 「かわいい」と成熟の物語作法 (朝日選書)
発売日販売日未定
製作者阿部公彦
販売元朝日新聞出版
JANコード9784022630384
カテゴリ » ジャンル別 » 文学・評論 » エッセー・随筆

購入者の感想

小説を読む作業は砂金採りに似ていると私は思っています。どんな小説にも少なくとも1つはキラっと目を引く表現があるからです。
この著者の本は文芸評論なのに、いつも必ずキラッとした文章があります。
今回私が一番そう感じたのは「人間にとって自分の声を聞き届けてもらおうとする衝動は、この世に生まれ落ちたときからはじまり一生ついてまわる業のようなものなのだ」という一文です。
内容については、「幼さの力」を軸に成熟にも触れており、サブカルチャーのこと、実際の子供の性質、枕草子、似ている英単語とのリンク、脱力、老い…など多岐にわたって記述されています。
とりあげられている作家に好きな人がある人ならば「あぁ、だから自分はこの人の作品が好きなのかぁ」と納得できる場面があると思います。もしくは「そうかぁこの作家が苦手なのはこういう性質があるからなのかなぁ」とか。自分の文学的好き嫌いの理由を考えてみるのもとても楽しいと思います。
著者は伝記的側面から作品を読み解くことはあまりせず、いつもテクストの上に証拠を見つけ出すというスタンスです。自分は伝記的側面に重点をといて高校や大学の卒業論文などを書いてしまっていたので、もっと早くこの著者の本に出会えていればよかったと思いました。
ぜひ、これから卒業論文を書く学生さんや、文系進学を考えている高校生の皆さんにも読んでもらいたいです。
また前作の『善意と悪意の英文学史』と語りの丁寧さ・幼さで結びつけられるところもあり、どちらも読んでみるとより楽しめると思います。
実は著者の語りには「ですます」「である」混合型があったのですが前作と今作にはそれがありませんでした。学位を取得するための論文では「「である」調に統一せよ」と我々は教わっているために、まるで全ての文章にそれを適用しなくてはいけない風潮がありますが、本当に素晴らしい文章を書ける人は混合型の方で、より本領発揮するように思えます。
この著者の混合語りが私はとてもお気に入りでした。長文と短文、ですます・であるを黄金比で入れてきてグッとくるのです。

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