四方田犬彦の引っ越し人生 の感想

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タイトル四方田犬彦の引っ越し人生
発売日販売日未定
製作者四方田 犬彦
販売元交通新聞社
JANコード9784330002088
カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 著者別 » や・ら・わ行の著者

購入者の感想

本書は雑誌「散歩の達人」に連載された四方田犬彦の連載記事をまとめたものである。関西に生まれ東京は世田谷にあった「父の勤めていた自動車メーカーの社宅」にはじまる四方田犬彦の「人生双六」の足跡をたどることで、それがそのまま体のいい散歩案内にもなっているところが味噌である。ネタに困った作家は、自分のプライバシーの切り売りに走るというが、大弁護士先生を祖父に持つ「資産家秀才家族」に生まれた四方田君のプライバシーを、少しずつ少しずつストリップよろしく脱いでいくのが本書の魅力の大本か。

四方田君の家族、特に母親は非常に教育熱心な女性だったようである。関西から見ず知らずの東京に引っ越してきて早々、下馬という世田谷の、今でいう「高級住宅地」に引っ越してきながら、地元の駒繋小学校はレベルが低いということを母親はいち早く察知してきて、わざわざ遠く離れた目黒区の五本木小学校に越境入学させている。しかも、しかもである。まだまだ日比谷高校、戸山高校、新宿高校、西高校、小石川高校という名だたる都立名門進学校が覇を競い、開成あたりはまだまだ体の好い滑りどめにすぎなかった当時、いち早く「日本進学教室」なる当時としては有名な学習塾に彼を通わせて「東京教育大附属駒場中学校」に彼を押し込んでいる。

その後、紆余曲折あって犬彦くんは一浪のすえ「腐っても東大」と蔑まれる東大文三に入り、東大文学部へと進学する。本書では、この「紆余曲折」の原因が大学進学の前後に父親が勝手に家を出て行って「長らく続いた両親の離婚騒動に終止符が打たれた」ことが明かされている。犬彦君ははっきりとは書いていないが、おそらくは父親が、母親よりも年下の若い女性に手を出して(つまり浮気)、離婚せざるをえないはめになったのであろう。彼の母親の凄いところは、祖父の遺産を元に購入した井の頭線浜田山駅近郊にあった100坪の一戸建てを離婚と同時にただちに処分し、心機一転、吉祥寺のそばの三鷹台に新たに一戸建てを買い直しているところである。その後の生活費を彼女がどう工面したのか知らないが、関西から祖母を呼びよせて同居しているところをみると、ここでも「遺産」が出動して、おそらく生涯を遺産を食いつぶすことで暮らした有閑マダムであったのではないか。

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