バトル・オブ・ブリテン―イギリスを守った空の決戦 (新潮文庫) の感想
参照データ
タイトル | バトル・オブ・ブリテン―イギリスを守った空の決戦 (新潮文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | リチャード ハウ |
販売元 | 新潮社 |
JANコード | 9784102430019 |
カテゴリ | » 本 » ジャンル別 » 文学・評論 |
購入者の感想
バトル・オブ・ブリテン…英国本土防空戦については、本書以前にも多数の書籍が出版されたが、使用された機材やシステムの生まれた背景を知るには、一部マニア向けの専門書を読むしかなかった。本書は限られた紙面を最大限駆使し、そうした背景事情を第一次大戦まで遡り、総合的に扱ったものである。
本書で特筆すべきことのひとつは、和訳の文庫本としては驚異的なほどの分量で、統計資料や図説、証言集などを盛り込んだことである。文庫本で省略されがちなこれらの「付録」が収録されたことで、遠い異国の地の闘いを理解する手助けになっていることは高く評価されるべきだろう。
もうひとつ、当時の戦闘機軍団司令官ダウディング大将について、長所も短所もひっくるめて評価を下していることも、特筆すべきことだろう。彼の退役に関する議論について、「何度も定年延長しているうえ、激戦で過労だった」として、首脳部との対立を主因と見る突然罷免説を退けているが、司令官の過労は他の書籍でも指摘されており、共著者の採った立場は概ね正しいと思われる。
そして、防空システムや補給・修理の問題について、空戦それ自体よりも多くを割いていることは、本書の性格を最も良く反映するとともに、防空戦の難しさを示すものである。限られたリソースを有効に使うという命題は、過去そして現代の日本の防空戦略における命題でもあり、決して他人事ではないのである。
名機スピットファイアほど目立たなかったものの英国本土防空を支え続けたハリケーンと同じく、本書もまた、派手さこそないが芯の通った傑作といえるだろう。
本書で特筆すべきことのひとつは、和訳の文庫本としては驚異的なほどの分量で、統計資料や図説、証言集などを盛り込んだことである。文庫本で省略されがちなこれらの「付録」が収録されたことで、遠い異国の地の闘いを理解する手助けになっていることは高く評価されるべきだろう。
もうひとつ、当時の戦闘機軍団司令官ダウディング大将について、長所も短所もひっくるめて評価を下していることも、特筆すべきことだろう。彼の退役に関する議論について、「何度も定年延長しているうえ、激戦で過労だった」として、首脳部との対立を主因と見る突然罷免説を退けているが、司令官の過労は他の書籍でも指摘されており、共著者の採った立場は概ね正しいと思われる。
そして、防空システムや補給・修理の問題について、空戦それ自体よりも多くを割いていることは、本書の性格を最も良く反映するとともに、防空戦の難しさを示すものである。限られたリソースを有効に使うという命題は、過去そして現代の日本の防空戦略における命題でもあり、決して他人事ではないのである。
名機スピットファイアほど目立たなかったものの英国本土防空を支え続けたハリケーンと同じく、本書もまた、派手さこそないが芯の通った傑作といえるだろう。