畏るべき昭和天皇 の感想

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タイトル畏るべき昭和天皇
発売日販売日未定
製作者松本 健一
販売元毎日新聞社
JANコード9784620318455
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

購入者の感想

20世紀に政治的に生きた人物の中で、最も優れた政治的理性と政治力を示した人間は誰だろうか?「昭和天皇」は、その六十数年に及ぶ動乱の時代において、常にバランスのとれた判断とときに「決断」を示し、「日本」という国家を支え続けた。戦前の「地域覇権国家・日本」と戦後の「経済大国・日本」がアジア・アフリカ諸国の独立と発展を促し、世界の潮流を変えたとすれば、日本という国家を一貫して支えてきた昭和天皇は、「20世紀全体のシンボル」の一人であったことは間違いない。
本書は、その昭和天皇の心の内奥と天皇が体現した「政治的理性」の真実に迫ろうとするものである。

著者は、本書をまず天皇と三島由紀夫の隠された確執から記述を始める。三島は自衛隊市ヶ谷駐屯地での衝撃的な自決事件の四年前、「英霊の声」で、天皇の「人間宣言」を念頭に置いて「などてすめろぎは人間(ひと)となりたまひし」という呪詛の言葉を放っていた。三島の原理主義的観点から言えば、「二・二六事件の青年将校たち」や「特別攻撃隊の兵士たち」は、天皇を「現御神(あきつみかみ)」と信じて死んだのであって、天皇機関説の天皇や人間宣言の天皇のために殉じたのではない。天皇は、あくまで「現御神」でなければならないとする。
これに対して、天皇は、三島の考え、即ちほとんど「挑発」と言うべきそれを、黙殺した。既に、昭和10年の「国体明徴問題」の折り、天皇は「天皇機関説で結構だ」と周囲に漏らしていた。敗戦後の昭和21年、GHQの意を受けて幣原喜重郎が「人間宣言」を提案したとき、天皇は「五箇条の御誓文」という明治天皇以来の伝統に立ち返った後、さりげなく天皇の神性を否定した。これは幣原のGHQに迎合する軽薄さを軽くたしなめているかのように見えるものである。

このエピソードは、実は、昭和天皇の本質を解き明かすものであろう。著者の考察は、この後、戦前戦後の六十数年に及ぶ昭和天皇の「立憲君主としての平常心」に絶えず立ち返っていくからだ。この天皇の平常心の前では、幣原も三島も相手にされない。時代に翻弄されている人間が、時代を超えたものを絶えず見据えている人間、「昭和天皇」にいなされている。
もとより、天皇が最初からぶれのない毅然とした人間であったわけではない。

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