人間が人間でなくなるとき――フッサールの影を追え、とメルロ=ポンティは言った の感想
参照データ
タイトル | 人間が人間でなくなるとき――フッサールの影を追え、とメルロ=ポンティは言った |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 岡山 敬二 |
販売元 | 亜紀書房 |
JANコード | 9784750514130 |
カテゴリ | ジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想 » 論理学・現象学 |
購入者の感想
現象学的見地からみた心身問題=身体論を分かりやすく説き明かした入門書です。フッサールとメルロ・ポンティを手がかりに心身問題=身体論、さらには人間の本質に迫ろうとする大胆な試みです。残念なのは前置きがやや長すぎることです。いきなり心身問題=身体論の核心を突いてもよかったのではないかと思いました。例えば、身体性とは何かに関してはメルロ・ポンティが『知覚の現象学』で取り上げている幻影肢や壺(顔)の事例などを説明すると分かりやすい記述になると思います。フッサールから見ると他者とは「間主観性」という概念によって把捉されます。この間主観性の限界を乗り越えるべく、メルロ・ポンティは身体性の概念を提示したのではなかったかということです。また、人間の本質については本書で追究されているのはあくまでも現象学的見地から見た人間本質論であると思います。であるなら、サルトルの「実存が本質に先立つ」という主張とか、ハイデッガーの「事実存在と本質存在」の区別を取り上げるのが順当なのではないかと思われます。結局、現象学的見地から見ると「人間本質論」とは、「人間存在の本質論」になると思います。とはいえ、本書は著者の思考の展開に寄り添って読んでいくと随所に興味深い発見があり、面白いです。現象学や哲学に関心ある人に本書を薦めます。