ゲゲゲの女房 の感想
参照データ
タイトル | ゲゲゲの女房 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 武良 布枝 |
販売元 | 実業之日本社 |
JANコード | 9784408107271 |
カテゴリ | ジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論 |
購入者の感想
本書は「ゲゲゲの女房」こと水木しげる先生の妻、布枝さんがお書きになった自伝です。
この自伝は昭和一桁生まれの一女性の半生記です。と同時に半世紀近くも連れ添ってきた
水木しげる先生についての、貴重な記録になっています。
では同伴者である布枝さんの眼に水木先生はどう映っているのでしょうか。私は本書のな
かで、以下の三つの点がとくに印象にのこりました。
まず先生が努力の人であることです。食うや食わずの貸本マンガ家の時代から、先生は無
心にマンガを描いていきた。筆者はその姿を間近で見ていました。左の肩で原稿を押さえ
ながら、顔を原稿にくっつけんばかりの姿勢でひたすら描き続ける姿を。そんな姿を見て
きた筆者にとって、先生は「誰よりも働き、誰よりも努力してきた人」なのです。
つぎに先生はじぶんの親族を大事にする人だということです。具体的には自分たちのこと
を後回しにしてでも、親兄弟の面倒をみるということです。たとえば先生は失った左腕の
恩給を実家の父母にあずけていました。食うや食わずだった生活の背景にはそうした事情
もあったわけです。そして先生は実家の両親を呼び寄せ、また水木プロにご兄弟を呼び寄
せる。こうして武良家の面倒をみるようになります。このような先生の親族愛はときに家
族愛と対立するものでした。そのため筆者はたいへん複雑な思いを抱いていたことが伝
わってきます。
最後に先生は生き抜く力がすごい人だということです。描いても描いても報われない、そ
れどころか稿料を値切る材料として作品までも貶められる。貸本マンガ家時代のそんな絶
望的な状況をどうやってのりこえたのか。筆者は先生の「生きる意志」、その強さにある
と考えています。つまり先生はその無類の生き抜く力でどんな逆境であれ、のりこえてき
たのだと。
本書をよむと、「なまけ者になりなさい」「がんばるなかれ」「のんきに暮らしなさい」
と言って周囲を喜ばせる人の、等身大の姿がみえてきます。
【目次】
一章