香をたのしむ ―ハートフルフレグランスのすすめ (日本人の癒し4) の感想

本書は「日本人の癒しシリーズ」の４冊目にあたります。
このシリーズの基調となる思想を表す言葉が「ハートフル」。
著者・一条真也氏の造語ですが、あたかも本書のテーマでもある「香り」の如く、
この言葉は既に広く世の中に流布しています。

「茶」、「花」、「灯」、そして「香」。
このすべてに共通するのは、心豊かな人生にとって、
かけがえのない存在であるということ。
考えてみれば、このすべてが集約されている場所があります。
そう、仏間です。その仏間に設えられた仏壇。
父が身罷ってから早いもので来年十三回忌を迎えます。
しかし、父の魂とは、いまも実家にある仏壇を通じて、
繋がっていることを強く実感しています。

“すべての出来事に感謝し、すべての人から学ばせていただくこと”
結婚式にあたり、父が餞に贈ってくれた言葉です。

「日本人の癒しシリーズ」が紹介する「茶」、「花」、「灯」、「香」は、
今という時間を最愛の人と過ごす上での潤いであると同時に、
愛する人を亡くした人を癒してくれるハートフル・アイテムでもあるのです。
さらに亡くなった最愛の人、その魂と交信するための装置である
仏壇を起動させる４つのナビゲーションかもしれません。

本書を読みながら、「ありがとう」という感謝の言葉が口をついて出てきます。

日本香堂と香十の代表者と一条氏の対談は、シリーズ中で最も感銘を受けました。
日本、そして日本人の感性こそ、世界を平和にしていく可能性を大いに秘めているのです。
つれづれに書いたレビューは、この対談に触発されたものです。

願わくば、「日本人の癒しシリーズ」の続編が上梓されんことを！