日本と中国、「脱近代」の誘惑 ――アジア的なものを再考する の感想
参照データ
タイトル | 日本と中国、「脱近代」の誘惑 ――アジア的なものを再考する |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 梶谷 懐 |
販売元 | 太田出版 |
JANコード | 9784778314767 |
カテゴリ | ジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門 |
購入者の感想
大学人が知識人として著した書物がめっきり少なくなった。日頃から残念なことだと思っていたら、本書と出会った。自らの専門を踏まえながらもそれに閉じこもることなく、影響力のある書物を咀嚼し、採るべきは採り、批判すべきは批判して、議論を織り合わせていく。主たるメッセージは、東アジアで政治的な公共性を構築することの必要性とその困難さということだが、著者は決してあきらめることなく、困難さの様々な要因を丁寧に解きほぐし、公共性の構築へと向かう道を探る。戦前のようなアジア主義におちいることなく、帝国的秩序にすがることもなく、(明記されてはいないものの、アメリカの日中分断策を強化することのないような)閉鎖的ではない公共圏をめざすのだ。そのために普遍性というものをどのように考えるのかが本書の大きな焦点のひとつになるが、それ以外にも、中国における右派と左派、民主と憲政のありようや、国家的資本主義と大衆的資本主義との関係など、読みどころがたっぷり。強い感銘を受けるとともに、われわれの今後の進路を考えるための確かな手がかりを得たように思う。