セリーヌの作品〈第2巻〉なしくずしの死 上巻 の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトルセリーヌの作品〈第2巻〉なしくずしの死 上巻
発売日販売日未定
製作者L=F・セリーヌ
販売元国書刊行会
JANコード9784336026705
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 全集・選書 » フランス文学

購入者の感想

第二次世界大戦中の反ユダヤ主義言辞によって有罪判決を受け「呪われた作家」として生を終えたセリーヌの1936年に発表された第二長篇。前作の『夜の果てへの旅』(邦訳中公文庫)と比較すると伝記的な部分のリアリティーがよりいっそう複雑になっていて、狂騒的・妄想的な文体の過剰さからともすれば感じられるメルヘン風の枠組みが破壊されている傑作。
セリーヌの作品はフランス文学において大胆な口語表現の小説への導入が文体的に問題にされ正直言って初学者程度のフランス語能力の僕などには原書の過激さははとうてい理解不能なレヴェルにあるのだが、翻訳で水に薄めたような文章を読んでいると主題は「口語」なのではなくむしろ「書き言葉」というよりも《書くこと》そのものの痙攣的な営為にあると思える。貧民街で医師をする話者が執筆する『英雄伝』を同僚などに語りつつ、少年期を読者に語る入れ子構造(話者の名は作者と同じ「フェルディナン」という名前を持つ)を、しかしセリーヌはひたすら直線的に書いていく。それは、ボルヘスがもっとも複雑な迷宮とは直線であると言ったように、その直線性によってモニュメントとしての文学作品といった言葉思い起こさせさえするものだ。
呪詛と憤怒に彩られたセリーヌの作品は、しかし意外なまでに清浄な生の謳歌も感じられる。「文学はおとしまえをつけてくれる」と言い、「死か、嘘か」という絶望的な選択を提示しながら決して死には向かわないその強靭さが、セリーヌを盆百の「過激」で「アナーキー」な作家と隔絶する。

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

セリーヌの作品〈第2巻〉なしくずしの死 上巻

アマゾンで購入する
国書刊行会から発売されたL=F・セリーヌのセリーヌの作品〈第2巻〉なしくずしの死 上巻(JAN:9784336026705)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.