正義論 の感想

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参照データ

タイトル正義論
発売日販売日未定
製作者ジョン・ロールズ
販売元紀伊國屋書店
JANコード9784314010740
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 倫理学・道徳 » 倫理学入門

購入者の感想

このロールズ『正義論』が登場したとき、人文科学は、弱肉強食、自然淘汰の厳しい現実をただなすすべなく是認するしかない、無力な営みに転落していた。19世紀から20世紀にかけて、学問のほぼ全分野で、曖昧を排除しようとする近代的科学主義が全盛を迎え、哲学や思想、社会科学の分野においても、相次いで登場した、論理実証主義や構造主義、ポスト構造主義といった科学主義的ムーブメントが流行し、客観・論理・数字の話に持ち込めないのであれば、寝言であり妄想であるので切り捨てろとされた。とりわけ攻撃されたのは、旧来のモラル哲学で、道徳や倫理、人格尊重といった価値はあいまいで相対的、感情論や印象論に過ぎないとされ、説得力を失っていった。倫理学においては、道徳の科学根拠を発見しようとどこまでも厳密性、客観性を追求するメタ倫理学が隆盛し、当時の科学レベルでは見つかり様もない倫理の客観的根拠を求めて、針小棒大の議論をあてもなく彷徨った。

このとき、旧来のモラル哲学が排撃されたからと言って、人びとの価値観が真空になったのではない。現実の公共政策においては、経済学的レッセ・フェール論を中心に据えた新古典派経済学が、旧来の倫理や道徳が占めていた位置に収まった。無色透明の客観的科学を装った経済学が支持したのは、多数のためと犠牲を正当化する功利主義と、弱肉強食を放置する価値相対主義であった。

この低い評価は、本の内容とは一切関係がない。これは、本書の出版物としての評価だ。

掲題の通り、値段が高すぎるのだ。

7875円。これが適正な価格なら何も文句はない。黙って、1か月ほど昼食を100円のパンにしよう。

しかし、はたしてこの価格は適正なんだろうか?

この本のページ単価は9.3円だ(7875円/844頁)。

類書と比べてみよう。

ノージックの『アナーキー・国家・ユートピア』のページ単価は9.8円(5775円/586頁)。

これだけ見ると、なんだ、紀伊國屋書店は頑張ってるじゃないか、と思うかもしれないがそんなことはない。

ノージックの本を出版してる木鐸社は、専門書だけを販売してる小さな出版社だ。対して、紀伊國屋書店の規模は説明する必要もないだろう。宣伝にかけられる費用も違えば、配本数も違うだろうし、まして、大型書店のやってる出版事業がどれだけのアドバンテージを持っているか、門外漢でも容易に想像がつく。

そもそも、著者の知名度や学問的な重要度も異なる。見込んでいる売上部数が同じなはずはない。私の勝手な想像だが、ノージックの本は2000部ほどを見込んで設定された価格ではないだろうか(学術書は普通そんなもんだし、この本は以前出版された上下巻版の合本だから)。しかし、ロールズの『正義論』が、2000部ないし3000部を割るなんてことはありえないはずだ。

この本には、前の翻訳が不評でしかも絶版、長年新訳が待望されてきたという経緯がある。しかも前の訳本が出版された時代と違って、ロールズの『正義論』は古典としての地位を十分に固めている。大学で政治学や倫理学の講義を受ければ、必ず参考図書として名前が上がるだろう。大学図書館や公共図書館に買われるものだけでも相当な部数になるはずだし、教員たちが研究費で買う部数だってかなりのものだろう。

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