バカが多いのには理由がある の感想
参照データ
タイトル | バカが多いのには理由がある |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 橘 玲 |
販売元 | 集英社 |
JANコード | 9784087807288 |
カテゴリ | ジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会一般 |
購入者の感想
本書の構成・内容は、このページの「商品の説明」及び「目次を見る」に譲り本稿では特に取り上げないが、本書のタイトルは些か挑発的である。では本書のコンセプト(趣旨)は何かと言えば、端的には時事的エッセイでありその時々の時事ニュースや騒動にアイロニックに批評するというものであり、そこに著者の何らかの政治的・哲学的論理・一貫性があるとも思えない。著者なりのアイロニックな視点から表現すると、著者の立ち位置のない(読めない)時事放談と言うべきだろう。まず「PROLOGUE」の意義(その後の各論との関係性)が良く判らないし、「憲 法 改 正」のトピック(62〜64頁)では“改 憲・擁 護”派ともに揶揄する筆致であり、結局著者は「憲 法」問題を批判はするが自分がどうしたいのかは些か不明である。「嫌 韓 と 反 中」(72〜85頁)ではレバノンの事情をレポートしながら、「隣国同士で悪口をぶつけ合うだけの平和な日本」と揶揄するのだが、著者自身は「平和な日本」にいるのかいないのか良く判らない筆致である。このような著者のスタンスを有り体に言えば、事象の批判においては一段高見に自分自身を置くことで同一次元での自己否定を回避する(従って当該事情に対し自己のスタンス・意見は曖昧にする)という、非常に“上手い”方法を駆使していると言えよう。
この著者独特の手法(“上から目線”と呼んでも強ち誤りではない)は、概ね本書の各トピックに垣間見えるところである。「政治はいつもポピュリズム」(91〜93頁)でも、「貸金業法」改正と最高裁判例に批判的な筆致を見せながら、「金融業者をスケープゴートにしても貧困という根本的な問題が解決するわけはない」と言うのだが、それは当然であろう。最高裁や「弁護士」が貧困問題(社会補償)を解決できるものではないし、金融規制と社会福祉政策とは別次元である。社会福祉政策が充実しているからと言って、グレーゾーンの高金利問題(法の隙間)を放置して良い筈がない。イギリスの例を持ち出して「総量規制」が「貧困」問題を「悪化」させたかのごとく説いているが、建設的提案をするわけでもなく本末転倒の論理であろう(著者の欧米志向は「若者言葉」にも見える)。著者の筆致には欧州が好みのように散見されるが、続くトピックではオランダの「マ リ フ ァ
この著者独特の手法(“上から目線”と呼んでも強ち誤りではない)は、概ね本書の各トピックに垣間見えるところである。「政治はいつもポピュリズム」(91〜93頁)でも、「貸金業法」改正と最高裁判例に批判的な筆致を見せながら、「金融業者をスケープゴートにしても貧困という根本的な問題が解決するわけはない」と言うのだが、それは当然であろう。最高裁や「弁護士」が貧困問題(社会補償)を解決できるものではないし、金融規制と社会福祉政策とは別次元である。社会福祉政策が充実しているからと言って、グレーゾーンの高金利問題(法の隙間)を放置して良い筈がない。イギリスの例を持ち出して「総量規制」が「貧困」問題を「悪化」させたかのごとく説いているが、建設的提案をするわけでもなく本末転倒の論理であろう(著者の欧米志向は「若者言葉」にも見える)。著者の筆致には欧州が好みのように散見されるが、続くトピックではオランダの「マ リ フ ァ
橘さんの経済小説はとても好きです。
いつもハラハラしながらストーリーを楽しみ、ファイナンスの知識も得れて、
一冊で2度おいしい思いをさせていただいてます。
このエッセイはというと。。。
主に「それを言っちゃあ身も蓋もない」というような内容であり、
世の中のものごとに斜に構え、シニカルに論じているだけと言う印象です。
インターネットが流行る前であれば、それなりに衝撃的な内容だったと思います。
このようなシニカルで批判的な意見は現在ではネット上に溢れています。
それも見ないような層の人はきっとこの本も読みません。
また批判のあと著者なりのソリューションを提案しているものもあるのですが、
ほとんどが批判しっぱなしになってしまってます。
このようなテーマで書籍化ならばひとつひとつもう1歩2歩踏み込んで
解説したうえ、なんらかの解決策を提示していかないと物足りなく感じます。
一部の人がレビューに書いてますが、それゆえなんとなく上から目線に
感じるのではないでしょうか。
いつもハラハラしながらストーリーを楽しみ、ファイナンスの知識も得れて、
一冊で2度おいしい思いをさせていただいてます。
このエッセイはというと。。。
主に「それを言っちゃあ身も蓋もない」というような内容であり、
世の中のものごとに斜に構え、シニカルに論じているだけと言う印象です。
インターネットが流行る前であれば、それなりに衝撃的な内容だったと思います。
このようなシニカルで批判的な意見は現在ではネット上に溢れています。
それも見ないような層の人はきっとこの本も読みません。
また批判のあと著者なりのソリューションを提案しているものもあるのですが、
ほとんどが批判しっぱなしになってしまってます。
このようなテーマで書籍化ならばひとつひとつもう1歩2歩踏み込んで
解説したうえ、なんらかの解決策を提示していかないと物足りなく感じます。
一部の人がレビューに書いてますが、それゆえなんとなく上から目線に
感じるのではないでしょうか。
本書の冒頭で、ある民放テレビのディレクターの発言が引用されている。
「昼間っからテレビを見ている視聴者って、どういうひとかわかりますか?
まともな人間は仕事をしているからテレビの前なんかにいません。暇な主婦
とか、やることのない老人とか、失業者とか、要するにまっとうじゃない
ひとたちが僕らのお客さんなんです。彼らをひとことでいうと、バカです。
僕らはバカを喜ばせるためにくだらない番組を毎日つくっているんですよ。
あなたの役に立つ話ができるわけないでしょ」
ずいぶん昔の話と断りがあるし、本書のタイトルに絡めてインパクトのある
エピソードをあえて冒頭に持ってきたのかもしれないが、そもそも著者は
このTVディレクターを批判できる立場にあるのだろうか。媒体が異なるだけ
で自分も同じ穴のムジナという意識はないのだろうか。本書の内容はネット
のブログの記事を寄せ集めたようなもので、コンテンツとしてはテレビの
娯楽番組と50歩100ではないのか。
著者の定義では、バカとは直感的思考(あるいはファスト思考)しかでき
ないひとのこと。最初は「直観」(暗黙知)と「直感」を混同しているのでは
ないかとも思ったが、読み進めていくと生物が進化の過程で獲得してきた
防御反応のひとつとしての「直感」のことだと判った。しかしそれを直感的
思考と称するのなら虫にも直感的思考があることになり、それが本当なら
ノーベル賞ものの新学説だが、世間では普通そういうのを「バカ」と呼ぶ。
この本の内容は時事ネタ絡みのエッセイ集という感じで、タイトルとは
さほど関係のない話も多い。マスコミではできない切り口の情報もあるし、
暇な時の読み物としては刺激的で面白いかもしれない。でもこれってまさに
「バカを喜ばせるためのくだらない番組」そのものである。言葉や内容が
ろくに吟味されていない点もそっくりだ。「すべてのメディアは捏造装置」と
自ら認めているのは自虐か開き直りか。教訓本としてなら価値はあるかも。
「昼間っからテレビを見ている視聴者って、どういうひとかわかりますか?
まともな人間は仕事をしているからテレビの前なんかにいません。暇な主婦
とか、やることのない老人とか、失業者とか、要するにまっとうじゃない
ひとたちが僕らのお客さんなんです。彼らをひとことでいうと、バカです。
僕らはバカを喜ばせるためにくだらない番組を毎日つくっているんですよ。
あなたの役に立つ話ができるわけないでしょ」
ずいぶん昔の話と断りがあるし、本書のタイトルに絡めてインパクトのある
エピソードをあえて冒頭に持ってきたのかもしれないが、そもそも著者は
このTVディレクターを批判できる立場にあるのだろうか。媒体が異なるだけ
で自分も同じ穴のムジナという意識はないのだろうか。本書の内容はネット
のブログの記事を寄せ集めたようなもので、コンテンツとしてはテレビの
娯楽番組と50歩100ではないのか。
著者の定義では、バカとは直感的思考(あるいはファスト思考)しかでき
ないひとのこと。最初は「直観」(暗黙知)と「直感」を混同しているのでは
ないかとも思ったが、読み進めていくと生物が進化の過程で獲得してきた
防御反応のひとつとしての「直感」のことだと判った。しかしそれを直感的
思考と称するのなら虫にも直感的思考があることになり、それが本当なら
ノーベル賞ものの新学説だが、世間では普通そういうのを「バカ」と呼ぶ。
この本の内容は時事ネタ絡みのエッセイ集という感じで、タイトルとは
さほど関係のない話も多い。マスコミではできない切り口の情報もあるし、
暇な時の読み物としては刺激的で面白いかもしれない。でもこれってまさに
「バカを喜ばせるためのくだらない番組」そのものである。言葉や内容が
ろくに吟味されていない点もそっくりだ。「すべてのメディアは捏造装置」と
自ら認めているのは自虐か開き直りか。教訓本としてなら価値はあるかも。
最新作の長編小説の完璧な出来に比べると一枚落ちるので四つ星にしようか迷ったが、他の凡百の本との相対評価としてはやはり五つ星にせざるを得ない。最終章が衝撃だった。こういう本が出せるところが今のところまだ日本が救いのあるところ。下手するともうすぐ出せなくなる。