コリーニ事件 の感想
参照データ
タイトル | コリーニ事件 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | フェルディナント・フォン・シーラッハ |
販売元 | 東京創元社 |
JANコード | 9784488010003 |
カテゴリ | ジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » ドイツ文学 |
購入者の感想
世界でベストセラーになった「犯罪」「罪悪」を著した高名な現役刑事弁護士、フェルディナント・フォン・シーラッハによる初の長編小説です。地元ドイツでは35万部を突破したとか。前作同様に、罪を犯す人への愛しさ、哀しさを鮮やかに描く手腕は本作でも冴えています。
ライネンはベルリンで弁護士事務所を開いて2日目に殺人犯の国選弁護人を引き受けてしまいます。67歳のイタリア人移民が85歳のドイツ人資産家を殺しますが、被害者はライネンのかつての親友の祖父でした。容疑者は、犯行事実は明白にもかかわらず犯行にいたった動機を自供しないので、ライネンは頭を抱えてしまいます。弁護士なりたてで右も左もわからないのにライネンは絶望的に不利な状況で被害者側の代理人であるベテラン凄腕弁護士と対決することになります。彼は弁護の手がかりを掴もうと不眠不休で証拠を調べます。そして彼が突き止めた事実が公判を逆転させ、社会を揺るがせることになります。新人弁護士が繊細な優しい心と強い使命感を持つ人物に描かれていることが悲しいストーリーにさわやかな救いを与えています。
「あとがき」によると作者自身の姿がライネンに色濃く投影されているようです。父の「込み入ったことには首を突っ込むな」との忠告を振り切って刑事弁護士を志したこと、祖父の過去の経歴に重苦しさを感じてきたこと、「自分にふさわしく生きる」の信条をもっていること、などです。そして、前作同様にここで語られるのは「正義とは何か」「誰が犯人か」とかではなく、犯罪を通して見えてくる人間の姿です。作者は犯罪を犯すに至った男の辛くて哀しい人生をていねいに読者に差し出すのです。
作者の人間への優しい眼差しが強く心に残りました。ドイツの歴史の影で苦しむ人々に心を寄せる姿勢も彼のドイツにおける人気の一因ではないか、と推察します。「犯罪」などの短編はもちろん素敵でしたが、長編になって人物がたんねんに書き込まれた分だけ感動が大きくなりました。作者の主張もいっそう明確になったと思います。明晰で簡潔、静かな余韻を残す酒寄進一氏の訳文はこの作品にぴったりでした。
ライネンはベルリンで弁護士事務所を開いて2日目に殺人犯の国選弁護人を引き受けてしまいます。67歳のイタリア人移民が85歳のドイツ人資産家を殺しますが、被害者はライネンのかつての親友の祖父でした。容疑者は、犯行事実は明白にもかかわらず犯行にいたった動機を自供しないので、ライネンは頭を抱えてしまいます。弁護士なりたてで右も左もわからないのにライネンは絶望的に不利な状況で被害者側の代理人であるベテラン凄腕弁護士と対決することになります。彼は弁護の手がかりを掴もうと不眠不休で証拠を調べます。そして彼が突き止めた事実が公判を逆転させ、社会を揺るがせることになります。新人弁護士が繊細な優しい心と強い使命感を持つ人物に描かれていることが悲しいストーリーにさわやかな救いを与えています。
「あとがき」によると作者自身の姿がライネンに色濃く投影されているようです。父の「込み入ったことには首を突っ込むな」との忠告を振り切って刑事弁護士を志したこと、祖父の過去の経歴に重苦しさを感じてきたこと、「自分にふさわしく生きる」の信条をもっていること、などです。そして、前作同様にここで語られるのは「正義とは何か」「誰が犯人か」とかではなく、犯罪を通して見えてくる人間の姿です。作者は犯罪を犯すに至った男の辛くて哀しい人生をていねいに読者に差し出すのです。
作者の人間への優しい眼差しが強く心に残りました。ドイツの歴史の影で苦しむ人々に心を寄せる姿勢も彼のドイツにおける人気の一因ではないか、と推察します。「犯罪」などの短編はもちろん素敵でしたが、長編になって人物がたんねんに書き込まれた分だけ感動が大きくなりました。作者の主張もいっそう明確になったと思います。明晰で簡潔、静かな余韻を残す酒寄進一氏の訳文はこの作品にぴったりでした。