古書遊覧―珍本・奇書・稀覯本・ト本 (別冊太陽―日本のこころ) の感想

『古書遊覧』はこれだけ珍しい本とコレクターを集めたという点で絶大なる評価を下したいと思います。副題にあるように「珍本・奇書・稀覯本・ト本」のオン・パレード。ト本とはトンデモ本の略で、一般的には価値がないのですが、見方を変えると突っ込みどころ満載の本のようです。

限定本、文芸初版本、豆本といったところは古書の王道というくくりで紹介してありました。ディープな書籍マニアとしては、奇想科学小説(明治・大正編)、SF(昭和編)、サブカルチャー(戦前本)、発禁本、トンデモ本、雑書あたりに目を奪われることでしょう。
それぞれの項目の筆者の知識も半端ではありません。紀田順一郎、横田順彌、唐沢俊一、山前譲、松本零士、尾崎秀樹、米沢嘉博などが書いているわけですから、内容の深さとユニークさは折り紙つきでしょう。書かれている文章から本に対する愛情が如実に感じられました。各人の書庫や書棚の写真が掲載してありますが、実に見事なコレクターぶりで、圧倒されました。

120ページほどがカラーで、36ページがモノクロでした。掲載した書籍の点数はどれだけに上るかは分かりませんが、おびただしい書籍の表紙や中身の壮観さは、本好きを魅了する魔力があるように感じます。

稀覯本の絶対的な価値は評価できませんが、新刊本と相対的に比較できないものがあるからこそ、コレクターが血眼になって探すのでしょう。本書に登場する書籍のほとんどを読んだことがありません。たぶんこれからも出会うことがないであろう本たちと、本書を通してその姿を垣間見られただけでも幸せなのかもしれません。奥が深い世界への淵が潜んでいるようですから。