中世ヨーロッパの農村の生活 (講談社学術文庫) の感想

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タイトル中世ヨーロッパの農村の生活 (講談社学術文庫)
発売日販売日未定
製作者F. ギース
販売元講談社
JANコード9784061598744
カテゴリ歴史・地理 » 世界史 » ヨーロッパ史 » ヨーロッパ史一般

購入者の感想

① イングランドのエルトンと言う農村について残された荘園記録や、発掘された考古学的資料、航空写真の分析などを通して中世の農村の姿を再現した本。10年前の英国旅行で美しい農村の姿に感激したが、共同体の中で複雑に細分化された土地利用の形態は今とかなり異なっていたようで、今のイメージで中世英国を理解してはいけないと感じた。
② 身近な犯罪や村人同士の紛争は、裁判集会で慣習法に応じて裁かれるそうだ。治安の維持に不安を抱える時代なのですべての当事者が判断を受け入れる必要があったのこと。但し、領主と農民の扱いは平等ではない。道徳的な問題は教会裁判所の扱いになるのだが、性行為で伝統的な体位を取らなかったことまで対象になるとの説明には失笑してしまった。重罪はコモンローにより国王裁判所の扱いになるのだが、集会・教会・国王の三つの裁判所の管轄はかなり曖昧だったようだ。以上は一例で、農作業の方法、農奴の賦役、祝祭や結婚など多彩な生活分野が活写されている。
③ 一つの村で、イングランド全体、さらに欧州全体を捉えることには危険もあるとは思うが、異なる地域の記録を継ぎ接ぎするのも難が多いだろう。本書を読んで感じたのは、水田耕作の為の水系・水利の管理が不可欠であった日本と、畑作・牧畜主体のイングランドの共同体の差である。素人が簡単に論及できる問題ではないが、考えて見るのも一興かと思う。領主と農奴と言う単純な二元論を超えて中世を理解できる良書だと感じた。

中世ヨーロッパの(開放耕地制の)農村のうち、史料(※)のよく残っている村としてイギリス南部のエルトンという村を選び、史料を精査して、それに基づき当時の村の統治や生産活動や人々の暮らしを詳細に再現している。(他の研究者の研究成果も参照している)
※)調査記録、会計記録、荘園法廷記録など
推測は殆ど含まれておらず、立証できる範囲で述べているようだ。やっていることはそれだけなのだが、人々が食い、泣き、笑い、争うさまが生々しく浮かび上がってくる。

このエルトン村の12〜14世紀が歴史年表の中のどこに位置付けられるか、といったことは、特に触れられてはいない。
膨大な過去の中から或る一つの場を切り出して本の中に定着している。しかもそれは中世だ。現代と隔絶してはいるが、遥か彼方でつながっていると思える。そこがいい。

異常なほど強い興味をかき立てられる。止まった時間の中に凍結された、ありありとした生と日常。他の歴史の叙述とは異なる方法論で書かれた、ユニークな本だと思う。
原著は1990年刊と、意外に新しい。しかも著者は米国在住ということも意外だ。
同じ原著者による本に『中世ヨーロッパの城の生活』『中世ヨーロッパの都市の生活』があり、いずれも講談社学術文庫から翻訳が出ているそうだ。読んでみたいと思う。

ジョセフ・ギース/フランシス・ギース『中世ヨーロッパの農村の生活』 青島淑子訳講談社学術文庫
2008年5月10日 第1刷発行

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