流体力学 (前編) (物理学選書 (14)) の感想

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参照データ

タイトル流体力学 (前編) (物理学選書 (14))
発売日販売日未定
製作者今井 功
販売元裳華房
JANコード9784785323141
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » 物理学 » 力学

購入者の感想

著者の今井功先生は、日本の流体力学の大家の一人であられる。
その大家による、流体力学の詳細にわたるテキストの前編である。
序章において、流体とは何か、流れとは何かを問い掛けており、ここで多くの読者が、著者の卓越した物理への理解に驚き、また強く惹かれることと思う。
本書は、完全流体の理論に多くの頁が割かれている。戦前に完全流体の理論を駆使し、渦糸の理論、翼理論に取り組んでいた著者ならではの、詳細にわたる丁寧な説明がなされてある。おそらく、完全流体の理論について、本書を越える邦書は他にはないと思われる。
また、注目すべきは、本書のなかほどに、不連続流の取扱われていることである。この不連続流を取扱っている本は少ない。著者は、戦後、抵抗の理論として、Re→∞のモデルとしての不連続流を改良したモデルを提案し、鈍い物体を過ぎる流れの抵抗の公式を導いている。そんな筆者による不連続流の理論の説明は一読の価値があろう。また、筆者はこの不連続流という物理的イメージから超関数を説明している(「応用超関数論」)。
また、本書の後半からは、粘性流体の理論に入るが、NS方程式の厳密解の存在するケースについて取扱い、引き続いて低Reynolds数の流れを取扱っている。Stokes近似、Oseen近似について多くの頁が割かれ、特に後者は日本でよく利用、研究されたこともあり、興味深い。
残念ながら、後編は今のところ、まだ出版されていないが、目次にある境界層理論を含む高Reynolds数流れ、高速気流については著者の「流体力学」(岩波)が参考になろう。また高速気流については、「数学概論(応用編)」(岩波)に同じく著者による詳細な説明がある。
この著者による著書はいずれも優れているが、この本は、特に、理論流体力学を目指す学徒ならば、必ず目を通すべき本であろう。しかし、理論と限らず、流体力学を学ぶ者にとって、座右の書となろう。

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