永い言い訳 の感想
参照データ
タイトル | 永い言い訳 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 西川 美和 |
販売元 | 文藝春秋 |
JANコード | 9784163902142 |
カテゴリ | 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » な行の著者 |
購入者の感想
本木さん演じる幸夫の姿が、自分の奥底を見せられているような気がしてくる。
他者に対して偽善的だったり、繕ったりカッコ付けて良く見られようと生きているのだろうか。
夫婦とは、子供とは、男とは、妻とは、他者とは、など色んなことを改めて考えさせられた映画でした。
俳優陣の自然な演技は、かなり長回しながら空間を切り取っているからこそ、自然な演技が生まれ、あたかもそこにいそうな空気感は実に見事。演技ではなくシチュエーションが喋らせている部分もあるように思う。素晴らしい演出だと思います。
何度も自転車で坂を登って行くカットや海での子供逹と妻のカットなど凄く印象的で、無駄なクレーンショットや嫌なカメラワークが無いのが凄くいい。照明も列車内のシーンで俳優の顔がギリギリ見えているぐらいまで抑えナチュラルになるべくあてないライティングが心地よかった。
今年の日本映画も豊作。
素晴らしい映画をありがとうございました。
他者に対して偽善的だったり、繕ったりカッコ付けて良く見られようと生きているのだろうか。
夫婦とは、子供とは、男とは、妻とは、他者とは、など色んなことを改めて考えさせられた映画でした。
俳優陣の自然な演技は、かなり長回しながら空間を切り取っているからこそ、自然な演技が生まれ、あたかもそこにいそうな空気感は実に見事。演技ではなくシチュエーションが喋らせている部分もあるように思う。素晴らしい演出だと思います。
何度も自転車で坂を登って行くカットや海での子供逹と妻のカットなど凄く印象的で、無駄なクレーンショットや嫌なカメラワークが無いのが凄くいい。照明も列車内のシーンで俳優の顔がギリギリ見えているぐらいまで抑えナチュラルになるべくあてないライティングが心地よかった。
今年の日本映画も豊作。
素晴らしい映画をありがとうございました。
肉親や親しい人を喪ったときにどのように気持ちを整理して再出発するか、誰しも難しい問題である。それが愛が失われた関係であるなら、さらに難度が増すだろう。長年連れ添った配偶者であっても愛情が途切れてしまうと…。本書は「ゆれる」「ディア・ドクター」「夢売るふたり」で濃密な人間関係を描いた西川美和監督の最新小説である。
衣笠幸夫は、出版社を辞めて苦労の末に人気作家になったが、芽が出るまでの10年間は美容師の妻に食べさせてもらっていた。しかし、妻への感謝の気持ちはねじ曲がり、二人の間にすき間風が吹いていた。ある日、妻は親友と出かけたバス旅行で事故に遭ってあっけなく死んでしまう。残された幸夫は、慌てはするが、悲しみは沸かず葬儀に際しても涙が出ない。自分が妻を愛していなかったことに気づいた幸夫は、相手も自分に対して「ひとかけらの愛も」なかったのではなかと思い至る。どうして心が離れてしまったのか。幸夫は情けない気持ちになって心の整理がつけられない。しかし、ある事情から始まった亡くなった妻の親友の残された家族との付き合いが心の空白を埋めていく。妻に死なれたトラック運転手と2人の子供との騒がしい生活が、幸夫に欠けていた他者への思いやりを教えてくれるのだった。
西川美和さんは、幸夫に自分を重ねて書いたとインタビューで語っている。「愚かな人を徹底的に書くのは自分の課題。自分の持っている愚かしさをあますところなく(中略)主人公にすり替えて書いていきました」。いやいや、「愚かしさ」を持つのは西川さんに限らない、読んでいて幸夫はまるで私のようでもあると思った。身勝手で自己中心的で他者を後回しにする自分、身近な人間に誠意を欠いてしまう自分に思い当たる。西川さんは、いつも取り繕った人間の仮面を引っ剥がして「本性はこうではないか」と暴いてみせる。だからこの小説も他人事とは読めないのだ。
衣笠幸夫は、出版社を辞めて苦労の末に人気作家になったが、芽が出るまでの10年間は美容師の妻に食べさせてもらっていた。しかし、妻への感謝の気持ちはねじ曲がり、二人の間にすき間風が吹いていた。ある日、妻は親友と出かけたバス旅行で事故に遭ってあっけなく死んでしまう。残された幸夫は、慌てはするが、悲しみは沸かず葬儀に際しても涙が出ない。自分が妻を愛していなかったことに気づいた幸夫は、相手も自分に対して「ひとかけらの愛も」なかったのではなかと思い至る。どうして心が離れてしまったのか。幸夫は情けない気持ちになって心の整理がつけられない。しかし、ある事情から始まった亡くなった妻の親友の残された家族との付き合いが心の空白を埋めていく。妻に死なれたトラック運転手と2人の子供との騒がしい生活が、幸夫に欠けていた他者への思いやりを教えてくれるのだった。
西川美和さんは、幸夫に自分を重ねて書いたとインタビューで語っている。「愚かな人を徹底的に書くのは自分の課題。自分の持っている愚かしさをあますところなく(中略)主人公にすり替えて書いていきました」。いやいや、「愚かしさ」を持つのは西川さんに限らない、読んでいて幸夫はまるで私のようでもあると思った。身勝手で自己中心的で他者を後回しにする自分、身近な人間に誠意を欠いてしまう自分に思い当たる。西川さんは、いつも取り繕った人間の仮面を引っ剥がして「本性はこうではないか」と暴いてみせる。だからこの小説も他人事とは読めないのだ。