新装版 わたしが・棄てた・女 (講談社文庫) の感想

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参照データ

タイトル新装版 わたしが・棄てた・女 (講談社文庫)
発売日2012-12-14
製作者遠藤 周作
販売元講談社
JANコード9784062773027
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » あ行の著者

購入者の感想

さすがの筆力で一気に読ませるが、内容は少し物足りなかった。
本の帯に「100万人が涙した究極の愛」とあるのも、ただハードルを上げただけで、肩透かしを食らった気がする。
登場人物の行動がやや説得力に欠けている。物語の後半で、主要登場人物の男である吉岡が、もう一人の主要登場人物の女であるミツに会いに行く理由も、理解に苦しむし、ミツに年賀状を送るのも、なぜそんなことをするのか不思議だ。
お金に困っている親子に千円を貸すミツの行動も、ある意味自己中心的で、「愛」とも思えない。何よりも説得力がないのは、ミツのことを吉岡が今は「聖女」だと思っているということで、どうしたらそうなるのか、安直なつじつま合わせのように感じてしまう。

この作品に出会えたことに感謝。遠藤周作氏の評価が180度変わる快作である。

安岡章太郎氏のエッセイ(作家論?)を読んでその徹底した悪戯癖にずっと敬遠していたのだが、これを読むと実に力のある作家だとわかる。

安岡章太郎氏の短編やエッセイは好きだったし、吉行淳之介氏は比較的多く読んでいたつもりだが、遠藤周作氏は大昔に中編小説?を一遍読んで感銘はしたが、これはキリスト教徒でなくては正しく理解できない文学だなと感じ、距離を置いていたのだが、本作は宗教的な臭いは薄く、だれが読んでも感動できる傑作である。

遠藤周作氏というと灘校での落第生ぶりやふざけたエッセイのイメージが強烈で読まず嫌いが続いていたのだが、本作を読むと人生の残酷さ、醜さがダイレクトに伝わってくる。小説としても巧みでよくできている。いい意味で通俗性があって読者を飽きさせないと同時に、純文学としての体裁も保っている。外国文学のようなしっかりした骨格を持っていて、読者を飽きさせずに最後まで引っ張っていく。

キリスト教を題材にした作品は私にはとっつきにくいが、本作は誰にでもおすすめできる作品だと思う。

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講談社から発売された遠藤 周作の新装版 わたしが・棄てた・女 (講談社文庫)(JAN:9784062773027)の感想と評価
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