人生を面白くする 本物の教養 (幻冬舎新書) の感想

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　わたしはこの種の書籍の読み方にはコツがあると思っています。一言で言えば、自分の参考になると思う部分は素直に取り入れ、反対の部分にはあまり目くじらを立てないという読み方です。

　たとえば高齢化社会の中、若年層へのスムースな富の移行の方法として、相続税を100％にして子弟への贈与税を0％にせよ、といった大胆な発想は実行可能かどうかはともかくとして、発想として大いに参考になりますよね。経営者としてある部門が本当に大事だと思うなら毎日用事の有る無しにかかわらずとにかく顔を出せ、といったあたりは参考というより管理職にいるひとたちなら誰でも見習うべき姿勢なのではないかと思います。こういう部分は素直に感心したり、見習ったりすればよいのだと思います。

　一方で何かを勉強しようと思ったらまず一番厚くて本格的な本から読み始めよ、というあたりはあまり賛成できません。たとえば統計解析の勉強をしようと思ってこれをやったら、まず10ページ持たないことは一応専門のひとつとしているものとして受け合います。こういった専門書は土台になる数学的手法について一定以上の知識と理解があることを当たり前の前提として書かれているからです。中国に対する姿勢なども政治的立場の違うひとからは反論があるでしょうね。でもこう言った部分は、それはそれとして読めばよいのだと思います。

　そうして足し引きしてみると、参考になる部分の方が多い書籍なのではないかと思いました。ただ☆5つとするには不賛成の部分も多かったので☆4つとさせていただきました。
　なお、この本は出口氏に幻冬舎派遣のライターが取材をして、ライターと編集者が書籍としてまとめたものなのですが、最後にライター自身が実名で登場してこの本の成り立ちについて説明しています。このあたりはいかにも出口氏らしいオープンなやり方ですよね。こうしたライターの協力を得た書籍をあたかも自分が執筆したかのようにして発表している方々には反省を促したいと思って読んだことを申し添えます。

様々なリテラシーが低い人でも、平易に書かれているので誰でも読みやすい。
単に知っているだけの教養ではなく、その教養をどう生かすべきかを、
出口氏の経験と合せて語られているので、教えてもらわないとわからないというような受動的な人でも、
疑問でつまづくことなくスラスラ読めるだろう。

内容について。

島国住民日本人がいかに世界で遅れている点が多いか、再考する点が多いかを教えてくれる。
前半部にあるイングランドの考えさせる教育の話など、日本人の子供がいかに質の低い教育を受けさせられているかに愕然。

少子化の話は、彼の語る視点を多くの日本人が共有できれば、少子化の議論もスムーズになると思う。
（日頃自分が考えていることと被っているから余計親近感が湧いた）
その他、税の話、高齢者対策、原発問題、中国人に対してなど含めて、イデオロギーから離れて、
冷静で至極まっとうな意見と実体験に基づいて書かれている。
ただし、個人的には領土問題についての彼の「固有の領土」に関する考えには賛同できないが、
それ以外は素直に賛同できる。

自分の住む国に無関心な人々、自己中な高齢者、様々な情勢を考慮せずテレビや週刊誌の言説に惑わされている人々など、
様々な人々に一人でも多く読んでもらいたい一冊だと思う。

オープンな数字で平易に語ってくれている「日本の未来を考えよう」とこの本を、多くの日本人が併せて読めば、
自分たちでどう日本を作っていかなければならないか、主体的、能動的に考えはじめるきっかけになる良書だと思う。

本の読み方、旅、人づきあい、時事問題の見方、時間管理などのノウハウが、具体的に分かりやすく語られている。著者のビジネスマンとしての経験、豊富な読書量、そしてユニークな合理的思考に裏づけされていて説得力がある。「教養は人生における面白いことを増やすツール」「ここでお話ししているのはあくまで自分の原理原則。読者に押しつけたくない」といった言葉から感じられる著者の人間性にも惹かれる。「今頃勉強を始めても、もう手遅れでは」といった質問をされると、著者は、「今日の皆さんが一番若い。一番若いときに始めましょう」と答えるという。とても励まされました。

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