Address Unknown の感想
参照データ
タイトル | Address Unknown |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | Kressmann Taylor |
販売元 | Reclam Philipp Jun. |
JANコード | 9783150091074 |
カテゴリ | 洋書 » Formats » Accessories » Address Books |
購入者の感想
「Address Unknown」(住所不明)が原題の短編。
ホロコーストを描いたものとしては、最も戦慄すべき作品だ。
大西洋を渡って米国とドイツとの間で交換された20余りの手紙が、生々しい殺戮の描写よりも雄弁に統制社会の闇を告発している。
米国在住のマックスとドイツに帰った親友マーティンとの心地よい親密さからスタートする手紙がナチスドイツの統制が強まるとともに、みるみる様相を変えていく。愛する妹がマーティンの庭先でむざむざ虐殺されたことから、検閲を逆手にとったマックスの復讐がはじまる。
復讐は果たされ、親友マーティンの家にはもう手紙は届かない。
友人を陥れる手紙を送り続け、「Address Unknown」のスタンプを押された手紙を手にしたとき、彼の心には残ったのは苦い思いだけだったろう。
この小説で最も恐ろしいのは、妹を奪われた被害者である彼が心に憎しみを育てていることだ。憎しみに食い荒らされた心は、次の憎しみを再生産する。
この小説は一昨年話題を呼ぶまで、ほとんど忘れ去られていたという。
憎しみの連鎖に苦しむ今の時代が再びこの小説に脚光を浴びせたともいえる。今こそ、憎しみの連鎖をつないではならない、哀しみのために絶望してはならないと思わされるのだ。
ホロコーストを描いたものとしては、最も戦慄すべき作品だ。
大西洋を渡って米国とドイツとの間で交換された20余りの手紙が、生々しい殺戮の描写よりも雄弁に統制社会の闇を告発している。
米国在住のマックスとドイツに帰った親友マーティンとの心地よい親密さからスタートする手紙がナチスドイツの統制が強まるとともに、みるみる様相を変えていく。愛する妹がマーティンの庭先でむざむざ虐殺されたことから、検閲を逆手にとったマックスの復讐がはじまる。
復讐は果たされ、親友マーティンの家にはもう手紙は届かない。
友人を陥れる手紙を送り続け、「Address Unknown」のスタンプを押された手紙を手にしたとき、彼の心には残ったのは苦い思いだけだったろう。
この小説で最も恐ろしいのは、妹を奪われた被害者である彼が心に憎しみを育てていることだ。憎しみに食い荒らされた心は、次の憎しみを再生産する。
この小説は一昨年話題を呼ぶまで、ほとんど忘れ去られていたという。
憎しみの連鎖に苦しむ今の時代が再びこの小説に脚光を浴びせたともいえる。今こそ、憎しみの連鎖をつないではならない、哀しみのために絶望してはならないと思わされるのだ。