歩道橋の魔術師 (エクス・リブリス) の感想

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参照データ

タイトル歩道橋の魔術師 (エクス・リブリス)
発売日販売日未定
製作者呉明益
販売元白水社
JANコード9784560090398
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 中国文学

購入者の感想

1980年代の中華商場。全八棟のうち、愛棟と仁棟、愛棟と信棟の間に歩道橋がかかっていて、その上で様々な物売りが店を広げていた。マジックを披露しながら、マジックの道具を売る魔術師もそこにいた。タネも仕掛けもあるマジックをしながら、時にタネも仕掛けもないのではないかと思える魔法を、子どもたちに披露する。正体不明の孤高の魔術師。
商場で育った子どもたちは、「元祖はここだけ 具なし麺」を食べながら、商場の中を縦横に遊び回る。そして魔術師の魔法に魅せられる。彼らにとって、商場で生計を立てる大人たちが繰り広げるすさまじい夫婦喧嘩や離婚、火事、自殺、殺人といった、悲しいほどにリアルな出来事と同じように歩道橋の魔術師の繰り広げる魔法の世界もリアルだ。
黒い紙の小人がダンスをし、深夜の歩道橋を石の獅子が歩き、共同トイレからはシマウマが悠々と出てきて、水槽の中で透明な金魚が泳いでいる……。
それぞれの短編に登場する、商場で幼年期を過ごし、魔術師の魔法に魅せられた人物は、成長してもふと、あの頃の魔法の時間に帰ってしまう。成長して都市生活者となった彼らが、共通して抱く浮遊感・喪失感。
台北の、取り壊されて今はもう存在しない、中華商場。ごった煮的な魅力にあふれたワンダーランド。その場所があったからこそ、この不思議な魅力にあふれた短編が生まれたのだと、うなずける。
映画では、ホウ・シャオシェンの「恋恋風塵」や「童年往時」、エドワード・ヤンの「嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」、ツァイ・ミンリャンの「河」や「HOLE」などで、潤沢でノスタルジックで哀愁があり、どこか猥雑な魅力を持つ台湾をずいぶん堪能してきた。おかげですっかり台湾好きになったわたしであるが、今回、この短編集で、また、新たな台湾の魅力に浸ることができた。

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白水社から発売された呉明益の歩道橋の魔術師 (エクス・リブリス)(JAN:9784560090398)の感想と評価
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