COSMONAUT の感想

ほかの方も書かれてますが、これまでのBUMP曲とは少し変わったような・・・第一印象は柔らかくて聡明。でした。
カルマや乗車権などのような、激しさを感じる曲は少ないです。

ですが！ギターやベースの綺麗な旋律、伝わる言葉の強さ、浮かぶ映像美、それらは何も変わっていません。
結局カッコいいです。

聴けば聴くほど好きになっていく。これもBUMPの曲の凄みだと私は思います。
私の勝手な思いですが、だれでも時間と一緒に感じるものや視点も増えて変わっていくものだし、それを表現したらCOSMONAUTになっただけじゃないかなと。どの曲も、やっぱり深くてすばらしい☆

個人的には、ウェザーリポートのイントロからAメロのギターとベースの掛け合いが心地よかったり、66号線では[声をなくしたら・・・ それでも・・・？]の歌詞もメロも好きです。言い出したらキリがありません。
これからも何度も聴きます。

　まず、私がこのアルバムを☆３個の評価にしたのは、聴く人によって１にも５にもなりうるアルバムだと思ったからです。なぜそのような評価の揺れが起きるのかというと、昔のBUMPと現在のBUMPが奏でる楽曲には多少なりとも明らかな変化があって、それを受け入れるのか、否かが人によって違うからです。

　BUMPの楽曲の変化とは、サウンドが重厚になったり、メロディが複雑化したことも挙げられますが、技術の上達に伴い音作りがより凝ったものになることは、他のミュージシャンにもあると思います。着目して欲しいのは、歌詞の変化です。

　１作目のFLAME VEINから４作目のユグドラシルまで、藤原氏の書く歌詞はそのほとんどが『自分対自分』でした。氏の圧倒的な自意識から生み出される極私的な内情の吐露であるはずが、他者である聴き手の共感を得てしまうという、『人間あるある』とでもいうようなものです。
　５作目のorbital periodでは、それまでの『自分対自分』から、一歩踏み出して『自分対他者』になります。４作目までも他者の存在する歌詞は多々ありましたが、どれもが『他者を灯台にして自分を照らす』というものでした。しかし５作目になって、他者との関係性に重点を置いた歌詞が顕著になります。
　そして今作。アルバムの主流は『自分対時空』です。COSMONAUT＝宇宙飛行士というタイトルは、現在まで生きてきた自分の過去(そして他者の過去)と、その他者と生きる今を、他者と共に時空旅行する、したい、という思いのあらわれのように見えます。

　BUMPの歌詞の変遷は結局、藤原氏の成長でもあると思います。今まで曲作りをするときはずーっと一人だった氏は、今作の制作過程で、仕事仲間の方に『曲が無くてもスタジオに来なよ』と言われて嬉しかったそうです。自分を出発としたセカイから、セカイの中を生きる自分へ。
　BUMPと共に現在を生きている私はとても幸せです。みなさんはどうでしょう。

前作では随分ジミだったため、もはやフォークバンドか、とさえ思われたバンプですが、本作で一気に鋭さを増したように思います。
もちろん曲調や歌詞が激しさを取り戻したというわけではありません。
楽曲の視点が深さと鋭さを持ったという意味です。

数々の曲で「歌い手」の視点が僕でなく幼い僕に寄り添って応援する「霊的」な存在であることにきづかされます。例えば分別奮闘記は「君の夢がゴミと化して・・・」と歌います。僕の夢でありません。でもその夢はみんなの夢であり、人類共通の夢です。同様に魔法の料理は「君から君」です。「君の願いはかなうと大人になった君が言う」のです。この時僕は君と同一化し、共存していくのです。
そうした文学的な試みは今までのバンプにはあまり感じられなかったように思います。

それがロックであるかはどうかは別として、憧憬や回顧というテーマに沿ってまとめられたこのアルバムの背骨を貫いており、その完成度を高めてると思うのです。

他の方も絶賛していますが、文句なしに★５つです。