プリンシプルのない日本 (新潮文庫) の感想

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参照データ

タイトルプリンシプルのない日本 (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者白洲 次郎
販売元新潮社
JANコード9784101288710
カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 著者別 » さ行の著者

購入者の感想

白洲次郎は英国留学経験と明晰な頭脳を買われて、戦前〜戦後の政治の中枢に関わり、吉田茂のアドバイザーであり、日本国憲法が、GHQによって押し付けられた英語原案をほぼそのまま日本語訳されたものであることを証言している。また、第9条の戦争の放棄と自衛隊の矛盾についても、アメリカとソ連の関係が協力関係から冷戦の敵同士となったことによる、矛盾の始まりであることを実際に見聞きしていた人物である。この矛盾が未だに放置されていること。また憲法9条を守るなどと言っている人たちに「じゃあ自衛隊を廃止して在日米軍を強化してもらうのか」とか、また逆に、在日米軍はもういらないと言っている連中に対し、「防衛予算を大幅にアップする」などという筋の通ったことをいう政治家が70年間一人も出てきていないということも、問題である。

日本人は外から押し付けられた民主主義だから、その価値とそのプロセスをわかっていない、ということも言っている。まさにその通りだ。議会で徹底的に言論で戦うことをせず牛歩戦術だとか、暴力的に賛成多数の可決を阻止するなどというのは、言論の自由と民主主義政治に対する冒涜である。また政治家の発言の責任についても、様々な例を持って指摘されているが、現代でも全く同じだ。どうしてきちんと筋の通った説明ができないのか。またマスコミも問題の本質に対する批評を書くのではなく、上っ面の失言ばかりを捉えているのは幼稚だ。

現代の日本のこういった様々な問題は、終戦直後からあったのだと改めて納得。平成も29年、戦後72年になっても日本は基本的に本当に何も変わっていないということがよくわかる。また、日本の歴史、特に日本国憲法の成立過程、第9条の矛盾など、学校では教えられてこなかった、またマスコミも知らないのか無視しているのか、本質を伝えていないことが書かれている。現代日本人がまさに読むべき本だ。

現在、英国で近代英国哲学および政治哲学を勉強しています。この本を読まれた多くの方は、彼の素朴な正義感と、それを一貫したもの(要するに説得力のあるもの)にする彼のプリンシプルに大いに感銘を受けていると思う。私もその一人であり、彼のこの本を日本にいる時から何度読んだかわからない。

他方で、多くのレビューを見ていると、「日本(人)は本質的に変わっていない」、「白洲が生きていてくれたら」のような、さもありがちな故人礼賛および現在日本人に対する皮肉に終始しているような印象を受ける。しかしながら、それでは結局、不平不満しか言わない当事者意識のない有象無象と変わらないし、日本国民の知恵を信じた白洲の本意にも反すると私は思っている。英国にいるとよくわかるが、日本に足りないのは、国家を適切に統治する能力を有するように「それ用の教育」を受けてきたエリート層と、そうした能力を有しながらも、あえて中立・公平な立場から社会に携わろうとする良識のあるマスコミの二者であり、決して日本の国民が愚かな訳でない(議会は国民の反映というが、「それ用の教育」をするシステムが日本になく、有意な人材が輩出されない以上、国民は劣悪なものから選ばざるを得ないのが実情だと私は思っている)。それは今回の震災において、諸外国が一般国民の冷静な対応を絶賛したのと対照的に、政府の力量不足に対して厳しい批判を続けていることに顕著に表れていると思う。

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