街場の共同体論 の感想

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タイトル街場の共同体論
発売日販売日未定
製作者内田樹
販売元潮出版社
JANコード9784267019807
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会一般

購入者の感想

最近、日本も日本人もおかしくなってきている。
この、「おかしさ」を言語化することにおいて、内田氏は相当長けていると思う。
毎ページ「そうだよな」という箇所が、たくさんある。

最近の少なくない日本人が、なんでもかんでも、
他人をバッシングするようなメンタリティーになっている。
日本社会の通念上で支配的な倫理観や道徳感に照らし合わせて、
個人や集団、組織の「間違い」を見つけて、徹底的に批判するようになっている。
まるで、それが、自分の義務みたいに思っている人も多くなっているんじゃないだろうか。

個人的には、非常に気味が悪い現象だと思う。
その現象の背景にあるのが、完全なる人を求めて、
宗教用語を使えば、逆説的に個人救済を求めているような感じを受ける。

もちろん、この現象の背後には、今の日本のかなり絶望的な状況にある。
改めて言うわけでもなく、もう日本は豊かではない。

貧困率も20年前と比べて高くなり、
経済成長は、この20年でほとんどしていない。
また世帯所得も94年から25%ほど減少している。

また人口減少に直面し、これから日本は、長期的に衰退していく。
現在、日本の社会システムの抜本的な改革や変更が求められているが、
声高に叫ぶものはいるが、その面倒臭い実務的なことを行う実行者は、
圧倒的に不足している。

日本の歴史を見れば、日本社会の変化は、すべて外部の出来事がきっかけだった。
しかし、近代の歴史を振り返れば、「変化」した帰結は、いつも、「崩壊」だった。

今、多くの人が不安になり、個人の安定と救済を求めるのは、
非常に理にかなっていると思うが、現状、手軽な個人の救済はない。

おそらく、無意識的に完全なる誰かを求めて、そうではない人を、
排除する意識が起こっているのかもしれない。
他者と協力する時なのに、日本社会は、排除に向かっている。

現在、「共同体の再生が重要である」という認識は、ある程度共有されているように思います。
豊かな時代、もしくは豊かであるような幻想を多くの人が共有していた時代が終わった今、
道場を開いて共同体再生を実践している内田氏が、このように共同体について論考を書くこと
には価値があることでしょう。

共同体という言葉がキーワードになっているのはそれなりの理由があると思います。
内田氏の著作を読んだことのある方はご存じだと思いますが、彼は師弟関係や贈与、
教育、コミュニケーション、日本人などをテーマに論じることが多い人です。
今思えば、あれもこれも共同体を論じるための準備だったと言えそうです。(こじつけ・・・)

本書は大きな話をしておきながら、実にシンプルで当たり前の結論へと行き着くわけですが、
「我々の社会は当たり前のことができない」という現実に目を向けることから出発することは、
悪くないのかもしれません。

「弱者ベースの制度設計」「コミュニケーション能力とは」「大人7%説」など読むべきところが
たくさんある本なので評価を高くしました。

私は男性なので、本書中の「父親が家庭内でいかに必要とされていないか」という身も蓋も
ない話を読んで大変切なくなりました。父親ではありませんが、父親である人たちのことを
想うと不憫でなりません。あぁ・・・権威の失墜というのもまた共同体の中では重要な話です。

最後に、この本は吉本隆明の「共同幻想論」を意識して書かれているわけではありません。
共同幻想論の名前を出せば売れると出版社が判断したのかもしれませんが、内田氏の
新刊というだけで売れるのですから、余計な紹介を付ける必要はないと思います。0

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