切腹: 日本人の責任の取り方 (光文社知恵の森文庫) の感想

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参照データ

タイトル切腹: 日本人の責任の取り方 (光文社知恵の森文庫)
発売日2014-03-12
製作者山本 博文
販売元光文社
JANコード9784334786441
カテゴリ歴史・地理 » 日本史 » 一般 » 日本史一般

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本書は「商品の説明」(このページの上の方)にあるように、「喧嘩両成敗で切腹、普請が不出来で切腹、お家騒動で切腹、冤罪でも切腹」と称され、主として江戸時代における「誇り高く、しかしどこか辛くて切ないサムライの生き様」を、切腹という「日本人固有の『責任の取り方』」を同時代史資料等から実証的に紐解き、現代の社会構造に写像しつつ企業社会の責任の取り方を問うもの(「おわりに」)である。「はじめに」に依ると、「本書で少しでも触れる切腹者は、四百三十一名に及ぶ」としているが(7頁)、構成は(1)ハラキリ略史、(2)罪と罰と切腹、(3)なんとも切ない切腹、(4)御家騒動と切腹、(5)藩主と家臣、の5章からなる。

第1章では切腹の歴史的由来や殉死、武士の面子などの実例を考察、第2章では刑罰としての側面の事例、第3章は藩や上役に見捨てられた事例、些細な失敗をの事例、第4章では加賀藩と薩摩藩の「御家騒動」による切腹(強要)事例、第5章は、藩主と家臣の基本的関係、絶対的服従性からの切腹の意義を検証する。何れのトピックも同時代史資料に依拠し、原文(書き下し文)及び口語訳併記がなされており、歴史論として観ても実証性が高いものと思量される。

個人的には第4章の「御家騒動」の顛末と第5章が特に興味深いものがある。薩摩藩の「御家騒動」の場合は、史資料の処分等により十分な考察ができないことに著者は苦慮している(205頁など)。確かに騒動の発端、島津重豪の事件における位置付けや要因が不明瞭なところも見受けられるが、少ない史資料から客観的事実の緻密な考察が窺えて好感が持てる。また第5章では、藩主(主君)と藩士(臣下)の絶対的関係性を考察しつつ、「武士とは云は主君のために死ぬ事と見付たり」(223頁)として、「武士道精神」(切腹)とは結局武士社会のヒエラルキーの中で「上の者の責任を下の者に取らせるために利用」されたと批判的に結論しており(235〜236頁)、右結論から敷衍して「おわりに」では現代社会における企業の責任の在り方を問うているのが印象深い。

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