史上最大の決断---「ノルマンディー上陸作戦」を成功に導いた賢慮のリーダーシップ の感想

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参照データ

タイトル史上最大の決断---「ノルマンディー上陸作戦」を成功に導いた賢慮のリーダーシップ
発売日販売日未定
製作者野中 郁次郎
販売元ダイヤモンド社
JANコード9784478023457
カテゴリジャンル別 » 歴史・地理 » 世界史 » 一般

購入者の感想

 広義の経営書、狭義でリーダー論を扱った一冊…という触れ込み(著者も後書きで書いている)ですが
実際のところは欧州戦線入門書(リーダー論の本なので特に将軍にスポットを当てている)です。

 白水社から出ている大著『ノルマンディー上陸作戦1944』を読む時間はないけど、彼の戦争(というか
彼の地での戦いか)について一通り流れを知りたいという人には(入門書としては高いけどね)良いでしょう。

 リーダー論としては冒頭でチャーチル、最後にアイゼンハワーを挙げて、著者が説く賢慮(フロネシス
元はアリストテレスが提唱)こそリーダーに必要な要素であると説いています。急ぐ方は冒頭と最後だけ
読めば良いでしょう。

 …と言う訳で、戦史物、リーダー物、どっちつかずの感を受けた一冊です。

野中郁次郎先生は、アイゼンハワーを、松下幸之助が言うところの「凡夫」と見る。そして、凡夫ゆえに、試行錯誤という実践のなかから「賢い知」を発現させ、暗黙的(無意識に)に範を垂れることで、同じ凡夫たちをエンパワーし、組織の力を高めていく--。、きっとそういうことが言いたかったのではないかと、先生の最近のご講演を聞きながら、そう思った。本書は、事実を丹念に調べるAクラスのビジネス・ジャーナリストとの共著だったからこそ、良書に仕上がった。

ノルマンディー上陸作戦という空前の大規模にして複雑きわまりない作戦の計画、準備、実践を指揮した連合軍総司令官、ドワイト・D・アイゼンハワーのリーダーシップについて多角的に分析を試みた本。著者あとがきには、当初はチャーチルに注目していたが、この作戦について調べていくうちに「凡人たる非凡人、アイゼンハワーの卓越したリーダーシップ」に括目させられることになった、とある。

チャーチルとアイゼンハワーはリーダーとして異なる層にいる。チャーチルの第二次大戦における功績は、欧州で完全に孤立するなかドイツに屈することなく、アメリカを口説き落として参戦させたことである。アイゼンハワーの功績は、米英を主軸としてカナダ軍、自由フランス軍、ポーランド軍から成る300万人という大混成部隊をまとめあげて、機動戦と消耗戦の両方の性格を持つ空前の規模の水陸両用作戦を成功させたことである。

メンターであるフォックス・コナーから叩き込まれた軍事と哲学の古典的教養、戦車を分解して設計に至るまで身に付けたエンジニア的素養、そして部下から上司、ライバルまで会う人すべてを魅了する人間力を総動員して勝敗を分ける決断を重ねた。ド・ゴールやパットンといった、「危機のリーダー」タイプの激情型(劇場型でもある)の人間をうまく操り、また、「猫とブルドッグ」ほど相性の合わなかった米英軍を厳しい規律で一つにし、イギリス陸軍の司令官、モンゴメリーをして「誠実さの権化」と言わしめたその人間力としか表現できない強みは、ほんの少しの誤解や誤算が取り返しのつかない損失を招く戦闘の現場において最も稀少かつ貴重な資源であったと思われる。

人当たりは申し分なく、並はずれた共感力を備えていたアイゼンハワーだが、息子、恋人、側近といったもっとも近しい人たちからは狡猾で冷血、決して本心を明かさないと評されていたとも書かれている。単純素直な性格の人間にこれだけ非凡なことを成し遂げることはできない。本書の結論もアイゼンハワーは「普通の人」という概念を超えた複雑な人間だったとしている。当然だろう。

本書では、「史上最大の作戦」と言われるノルマンディー上陸作戦において、
連合国派遣軍最高司令官ドワイト・D・アイゼンハワーにスポットを当て、
究極の意思決定を要請される指揮官が、如何にリーダーシップを形成・発揮していくか、
その軌跡を丁寧に辿りながら、理想的リーダーシップは何かが探られる。

本書は、主に独軍ポーランド侵攻からバルジの戦いの期間を主体にしながら、
・西部欧州戦線を巡って展開された政治的思惑・鍔ぜり合い、
・各個別の戦線で展開された英米将軍間/陸海空軍間の指揮権を巡る角逐、
・各戦場の展開経緯、
を示し、各局面でアイゼンハワーが何に関心を寄せ、何を取捨選択したのかを考察する。
そして本書の著者は、その意思決定過程を辿ることで、多士済々の各連合国指導者や
個性強烈な将軍達、更には各兵士からも求心力を勝ち得たリーダーシップの淵源を
フロネシスを備えた実践知に求める。
第2次大戦の欧州戦線を歴史的に概括しつつ、リーダーシップが備えるべき要素に
思いを致すには有効な一冊。

ただ、通読した感想としては、全般的に「欧州戦記を通じたアイゼンハワーの伝記」
という印象が強かった。
個人的には、もう少し「リーダーシップ論」の深堀りを期待していたが、この点は残念。
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