アマゾンにも負けない、本当に強い会社が続けていること。 の感想

※サンプル画像 クリックで拡大します

前半の考察と仮説は正鵠を射ている。ネット通販ならメーカー直販以外はほぼ勝てなくなる。ではどうしたらいいかをコンサルタントの著者が自社クライアント2社の事例を通して解説していくのだが、事例を抽象化しきれておらず、ハラオチ感は少ない。アマゾンに代替えされない価値をフレームワークで解説するが、MECEでない上にこれまた本質的ではないように感じる。「本質的な価値を生むこと。その源泉はビジョンであること。」には同意なのだが、その具体についての記述が薄かったなという印象。

インターネットの登場は「福音」であった。

資金を持たない起業家はチャンスを見出し、シャッター通りの
商店主はネット通販に活路を求めて、起死回生をとげた。

ネット人口が急速に増加する間、供給は追いつかず、中小EC事業者は売上を
急速に伸ばしてく。ユーフォリアに浮かれたEC事業者の間には万能感さえ漂って
いたように思う。2008年頃までは・・・。

ところが今、ネットは「福音」から「刃」に姿を変え、EC事業者に襲い掛かり始めている。

ネットの進化は、そもそも市場を厳しく「効率化」する性質のものである。
相対的に非効率なものしか提供できない事業者が生き残れる余地はない。

高度にシステム化されたアマゾンの巨大倉庫ではロボットまでが働く。
彼らと競える企業などあろうはずもない。

この本に書かれているネットの進化に伴う市場の変化は、ある意味当たり前の
ことにも思われるのだが、渦中にある者は時にそれを認識するのが難しい。
世界の厳しい変化の流れを俯瞰的に理解する視座をこの本は授けてくれる。

その上で、この厳しい時代に中小EC事業者は如何に立ち向かっていけばよいのか？
著者は３つの成功事例を挙げて、その指針を読者に提示する。
経営者は覚悟と勇気をもって立ち向かえと！という叱咤と共に。

しかしながら、著者は意図的にその先の領域へ踏み込まずに本書を
終わらせているのではないのか？という気がしないでもない。

本の後半に書かれているように、現に多くの企業は「選ばれる理由」を
もたないまま事業を営み続けている。

では、覚悟と勇気をもって「選ばれる理由」の構築を目指したとして、
一体どの程度の事業者にその実現が可能であるのか？

簡単に構築できる理由であれば、そもそも差別的優位点になどならない。
これから起こる更なるネットの進化は、相当に難易度の高いことを達成しない限り、