恐竜は滅んでいない (角川新書) の感想
参照データ
タイトル | 恐竜は滅んでいない (角川新書) |
発売日 | 2015-07-09 |
製作者 | 小林 快次 |
販売元 | KADOKAWA/角川書店 |
JANコード | 9784040820101 |
カテゴリ | ジャンル別 » 科学・テクノロジー » 生物・バイオテクノロジー » 恐竜 |
購入者の感想
本書の趣旨は、タイトルだけからでは抽象的で多少判りにくい印象があるが、裏を返すとこのタイトル『恐竜は滅んでいない』≒恐竜は“現生”していると言う、本書の前提理解を象徴するものと言い得る。著者はまず「はじめに」において、問題提起として『恐竜』について「進化した恐竜」と「絶滅した恐竜」とを明確に分けている(8~9頁)。この事は『恐竜』自体の定義(生物的分類・進化系統の分析など)にも関係するところで、第1・2章(26~35・55~65頁)で詳細に解説されているが、ずばり古生物学上の『恐竜』とは「トリケラトプスと鳥類(イエスズメ)の最も近い共通祖先から生まれた子孫すべて」(55頁)と言うことになる。これには判りやすい「トリケラトプス」や「イエスズメ」と言う比喩があるが、厳密には「主竜類という共通の祖先から鳥盤類と竜盤類というふたつの大きなグループに分岐する形で生まれた」(60頁)ことを指す。ここで言う「鳥盤類」は「トリケラトプス」などを、「竜盤類」が現生の「鳥類」に至る系統であり、間違いやすいので注意する必要がある(62頁参照)。即ちタイトルに言う『恐竜は滅んでいない』ものとは、進化の系統から観た時に「共通の祖先」である「主竜類」から分岐した、「竜盤類」の子孫で最も進化した「鳥類」が現生していることを指している。「鳥類」が『恐竜』の仲間(分岐した子孫)であることは著名だが、本書は『恐竜』のかかる定義を踏まえて、その子孫(「竜盤類」)で最も進化した「鳥類」との進化のプロセスを概括しながら(第2・3章)、著者の恐竜化石の発掘成果などを基に、巨大化、体格・構造、食性、繁殖、足跡化石、絶滅、日本国内の発掘化石など広範なトピックから、恐竜の進化と実態を紐解くものと言えよう。