日本の不平等 の感想
参照データ
タイトル | 日本の不平等 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 大竹 文雄 |
販売元 | 日本経済新聞社 |
JANコード | 9784532132958 |
カテゴリ | ジャンル別 » ビジネス・経済 » 経済学・経済事情 » 経済学 |
購入者の感想
大竹文雄氏の不平等論は、橘木氏の議論を反証し、90年代の所得不平等の拡大は高齢化に伴うみせかけのもので、日本の所得格差の拡大は幻想であるという議論を行ったことで広く知られている。しかしながら、若年層の所得格差(または、非正規雇用者の正規雇用者に対する所得格差等、労働市場の「割り当て」により生じている可能性の高い所得格差)の拡大については、一定の懸念を示している。なお、本書は一体的な書籍というよりも、論文集的な性格を持っている。あえて欲を言えば、最後に著者による総括的なまとめとして、現在社会に存在している格差は問題視すべきものか、何らかの施策的な対応が必要か等を論じて欲しかったところ。例えば、過度に「結果の平等」を求めることは悪平等との意見が多くあることは理解するが、その格差が入口の「機会の平等」が確保されないことにより生じているのであれば、社会移動を通じて社会の活力を高めていく上で大きな障害となると言えるだろう。ただし、機会の格差や格差の世代間移転等への言及がない点を割り引いても、本書は不平等問題に関する現時点の決定版であり、今後は、本書をも起点として、格差問題を検討していく必要が出てくるだろう。