カルテット!人生のオペラハウス [Blu-ray] の感想

　久々に心温まる良質の映画に出会った感がします。
　2012年に公開された「カルテット！人生のオペラハウス（Quartet）」は、ダスティン・ホフマンが75歳で制作に挑んだ映画で、引退した音楽
家が暮らす老人ホーム「ビーチャム・ハウス」を舞台とした感動のドラマです。

　彼が監督を引き受けるのに際しては、引退した本物の歌手や演奏家を作品中に出演させることが条件になっていたといいます。
　この映画に登場する老人ホーム「ビーチャム・ハウス」は、1896年にヴェルディが恵まれない音楽家のために私財を投じ、最後まで尊厳を
もって音楽に向かいあえるよう、ミラノに設立された音楽家のための老人ホーム「音楽家のための憩いの家」がモデルになっています。

　劇中では、往時の栄光の輝きを失った老アーティスト達が高齢のために、時として物忘れ等の痴呆症状に襲われながらも、財政難で存亡
の危機にある「ビーチャム・ハウス」の存続のため、ヴェルディ生誕200周年を祝うチャリティー・コンサートを開いて資金調達するために練習
に明け暮れていますが、どちらかというと不協和音に満ちています。

　しかし、ここにジーン（マギー・スミス）が入所することにより、英国の旧四大オペラ歌手による伝説のカルテットによる歌劇「リゴレット」の四重
唱を据えてこのコンサートを成功させようと奔走することになり、徐々に人々の間の不協和音が氷解し、素晴らしいハーモニーに満たされて
いきます。

　何といっても、78歳のアカデミー賞受賞俳優マギー・スミス、75歳のトム・コートネイ、72歳のポーリン・コリンズ、70歳のビリー・コノリーの円
熟期に達した燻し銀の演技は素晴らしいものです。
　この４人をしっかりサポートするアン・ラングレー役のオペラ歌手ギネス・ジョーンズの年齢を超越した歌唱が素晴らしく、また、劇中で登場す
る本物のミュージシャン、トレヴァー・ピノックとデヴィッド・リアルのヴォーカル、ジャック・ハニーボーンのピアノ、そして、ロニー・ヒューズのトラ
ンペットによるSammy