文庫クセジュ(64)音楽の形式 [改訂新版] (文庫クセジュ 64) の感想

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西洋音楽楽曲の基本的な骨組みについて解説している本です。一般には「楽式論」として語られている内容です。

第一部・第二部に分かれていますが、メインとなるのは第二部「音楽の主要形式」です。項目のアルファベット順に並べられており、事典のような体裁になっています。

ただ、本書の根本となる精神は、第一部「ジャンル、様式、形式、構造」に示されています。第一部は短いものですが、本書の考え方の堅実さが表れています。《ジャンル genre》《様式 style》《形式 forme》《構造 structure》の４つの概念について規定が試みられています。

中でも、本書において重要と思われるのは《形式》と《構造》の別です。構造とは、細部がどうなっているのかという技術的な面において語られる問題です。他方、形式とは、その成立の歴史的事情や使われている場などを含む、より広い概念であると考えられます。

第二部の記述においても、その精神はすべての項目にわたって一貫しています。ただの事典として見るならば、本書の記述は簡素であり、もっと詳細で大部の事典は存在します。しかしながら、本書の利点は一人の著者によって書かれていることであり、したがってその主張や観点に一貫性があることです。記述自体も簡潔で要領を得たものであり、楽式について考えていくための契機となる本です。