A Visit from the Goon Squad の感想

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それぞれの章が異なる人物の視点から書かれており、しかも年代順ではない、というユニークな構成の小説。

現在ではないかと思われるニューヨーク市を舞台にした１章は、有名な音楽プロデューサーBennie Salazarのアシスタントを務めるSashaの、孤独でやるせない生活の一シーンを映し出す。２章で読者は１章で名前だけ登場したBennieの現在を知り、３章でBennieが若かりし頃にパンクロックバンドをやっていた頃の仲間に出会う。４章以降も、現在、過去、未来を飛び移りながら、Bennieを今の仕事に導いたメンターのLou、Bennieの離婚した妻、Sashaの大学時代の友人、恋人、叔父、と多くの人物が登場する。

著者が「goon squad」とタイトルにつけたように、それぞれの語り手は、「なんでこんなことをするのだ？」とどやしつけたくなるような（本人もそう感じているらしき）「どうしようもない奴(goon)」ばかりである。

だがA部がB部（１部２部ではなく、AとBというところもユニーク）に移る頃、突然これらの登場人物が愛おしくなってくる。情けないことをやらかし、それに押しつぶされそうになり、それでも生き続け（ることができたら）、成長して人生に何らかの意義を見いだす。そして「幸福」も。

全ページがスライドプレゼンテーションという１２章が、ストレートに胸にじんとくる暖かい章だというのも面白い。小説全体にBGMとしてロックが流れているのが聞こえるような気がするのもすばらしい。

文句なしの受賞作である。