驚きの皮膚 の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトル驚きの皮膚
発売日販売日未定
製作者傳田 光洋
販売元講談社
JANコード9784062196130
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » 生物・バイオテクノロジー » 生物学

購入者の感想

物の手触りに必要以上にこだわってしまう自分の性質から、以前から皮膚に対する興味がありました。
またひとつ、自分が知らなかった世界を教えてくれる本に出会うことができました。

この本は大きく3部構成に分かれています。
+皮膚の基礎研究に対して筆者が行ってきたアプローチと成果
+人間というシステムの最先端である皮膚がもっている驚きの能力の研究
+社会構造というシステムと人間の可能性に対する筆者が飽くなき興味
(以下で示す「部」の番号は、本書内での番号とは異なり、上記3つを指します。)

1部で私が感銘を受けたのは筆者の皮膚の本質を知ろうと言う意気込みと、それに対する物理と化学の知識背景をふんだんに使った研究手法です。皮膚の角層の保湿の主役はなんだ、という皮膚学会の論争に対する筆者の問いかけがその姿勢を表しています。
>>
そんなことより重要なのは、自動車のたとえに戻ると、「自動車のガソリンを燃焼させ、そのエネルギーを回転運動に変えて走る」というのが本質だということです。私は、角層機能についても、そんな本質的な議論、研究が必要だ、と思い始めました。
<<
筆者の研究の軌跡が物語のように読みやすく楽しく書かれています。

2部では皮膚の知られざる機能と性能について様々な研究成果を示しています。どのような内容かは本を読んで楽しんでいただきたいですが、私がこの本の中で「なるほど」と納得したたとえを紹介します。
>>
「企業の皮膚」で働く人たちわ、取引先や店頭で、お客さん一人ひとりへの対応について、いちいち「脳=取締役会」の判断を仰いでいては仕事にならない。最前線に立つ人が、かなりの判断を瞬時に下さなければなりません。
<<

3部目は皮膚との関係性がやや弱いですが、それを差し置いて筆者の余りある人間と社会科学と文明に対する興味と知見に触れることができます。

青山ブックセンター本店に本書を紹介する特設コーナーがあり、そこには著者の推薦する本が並んでいた。難しそうな科学本の隣に横尾忠則や草間弥生の本があったので興味を持ち読んでみると、これがとんでもなく面白い!!!

まず次々に繰り出されるエピソード(ゾウリムシの知能、皮膚の進化論、皮膚とこころの実験などなど)に惹き付けられます。(表紙が壁画の理由も納得出来ます。)
そして皮膚については、まるで一緒に研究しているかのようにドキドキしながらその不思議な仕組みが解明されていきます。
さらに「システムと個人」といった科学とはかけ離れたテーマを、芸術や哲学を素材にしながら、あくまでも科学者の目でスッキリと整理してくれます。
そして読み終えた時の何とも言えない感動。

膨大な情報量なのに読みやすい。
読みやすいのに奥が深い。
奥が深いのに身近に感じる。
この本を読むと、人間の営みが少しだけ違って見えます。
自分の皮膚や細胞の一つ一つがとてもいとおしく思えます。
システムに対抗する個人の尊厳を保つ勇気を与えてくれます。
ああ、私にはこの本の面白さを伝え切れません。

科学に興味のある方もそうでない方も、是非読んでみて欲しい。
素直にそう思える本でした。

本作は皮膚という僕たちにとって身近な対象の話から始め、そのサイエンス、そして、皮膚の意味を広い射程から論じている。
他者や外界とのインターフェイスとなるもの=皮膚というアナロジーを援用しながら、今作も軽妙なリズムの文章で著者の独特な思考転回が繰り広げられている。
後半では著者の多方面における興味や博識さがうかがえる内容になっていて、サイエンスの切り口だけでなく、文学、芸術、美学への論が展開される。ところどころに散りばめられた個人エピソードもまた、読者との距離感を感じさせない皮膚感覚を通じた対話になっている。

今作は皮膚が示す興味深い現象を語るだけでなく、それが多数集まって生じたシステムとしての皮膚論に軸足が置かれている。
全体(システム)と個(皮膚細胞)、Power of Tenのフィルムで示唆されるような視点の移動を思い浮かべながら読んでみるのも面白いだろう。

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

驚きの皮膚

アマゾンで購入する
講談社から発売された傳田 光洋の驚きの皮膚(JAN:9784062196130)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.