今こそマルクスを読み返す (講談社現代新書) の感想

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タイトル今こそマルクスを読み返す (講談社現代新書)
発売日販売日未定
製作者廣松 渉
販売元講談社
JANコード9784061490017
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想 » イデオロギー

購入者の感想

社会主義国崩壊と言う最悪の環境下に書いているので、なんとなく言い訳めいていると感じる向きもあるが、著者の気迫に当たると、もう周囲の状況なんか関係ない、堂々たる論考である。資本主義は、原理的に、耐久財の需要サイクルに左右される。放っておけば、耐久財が行き渡って機能している限りは、耐久財の販売は鈍り、結局は購買者たる労働者を逼迫、一般消費財の購買にも支障をきたし、周期的に不況になる。好況を維持するためには、有効需要の捻出しかないが、わけても、奢侈品という、なんら、生産性がなく消えていく商品の需要と供給がサイクルを描いていることが望ましい。旧ソ連がGNPで世界第2位、米国に迫った理由は、強大な軍備維持、という「奢侈品」による「有効需要」の捻出によるもので、資本主義国も、最終的には、奢侈品を「捏造」しながら需要を落とし込まずにいなくてはならない。こういう指摘は、やっぱり資本主義の問題で、要らぬ需要を捻出するために環境破壊を促進してきたことは事実だ。だが、共産主義が回答になるかと言えばそうではない。ここが広松氏の苦しいところだと思う。それと、やっぱり読んでもわからないのが、「剰余価値説」に基づく「搾取理論」だ。経営者の労働がなぜ評価の対象とならず、労働者の搾取の結果だと言えるのか。著者は、そんなのあたりまえだろ、と言わんばかりに説明していない。詰り経営者の経営者としての才覚や決断を単なる時間労働で考えるという情けないお話になっており、経営者の労働は認めるが、剰余分がそのすべてがそうだとは認められないという極端な見解を簡単に指摘して終わっている。確かに、経営者や上位職者の労働対価をどう評価するかは、あいまいに過ぎるので、その点が今日でも、破たん金融機関の社長の極端な高収入など批判されているわけだが、だからといって、今度は、マルクス流の古い労働価値で考えては、議論はなにも進展しないし、本書はこういう肝心な点をスキップしてしまっている。「資本論」を読んでも良く分からないところだ。資本家の肩を持つ気はないが理に適っていないと思う。個人的にはマルクスの本領は「唯物史観」にあって、「本源的蓄積」の指摘は圧巻だと思う。0

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